訴状が最高裁判所に提出された場合に、当該訴えが訴訟上の信義則に反するとして却下された事例
判旨
最高裁判所に管轄がないことを認識しながら、あえて管轄裁判所への移送を求めて訴えを提起する行為は、訴訟制度の趣旨・目的に照らし著しく相当性を欠き、信義則に反し不適法である。
問題の所在(論点)
本来管轄のない最高裁判所に対し、移送を目的としてあえて訴えを提起する行為が、訴訟上の権利の濫用(信義則違反)として却下されるか。
規範
訴訟上の権利の行使であっても、現行法規に則って訴訟手続を追行する意思を欠き、不当な目的によるものであって、訴訟制度の趣旨・目的に照らして著しく相当性を欠く場合には、訴訟上の信義則に反し不適法となる。この場合、裁判所は移送の義務を負わず、民訴法317条1項を類推適用して決定により訴えを却下することができる。
重要事実
弁護士である原告代理人は、離婚等請求事件について、仙台家庭裁判所への移送を求める旨を記載した訴状を、管轄のない最高裁判所に提出した。訴状には「令和管轄の利益」といった独自の用語が用いられ、印紙の貼付や郵券の予納もなされていなかった。また、当該代理人は過去にも同様の行為を繰り返していた。
あてはめ
原告は、最高裁に管轄がないことを十分認識しながら、あえて最高裁を経由して本来管轄のない裁判所への係属を求めており、正当な権利行使とはいえない。このような訴えは、不当な目的によるものであり、裁判所に管轄調査の負担を強いることは法的正当性がない。最終審裁判所としての最高裁の運営維持の観点からも許容できず、過去の同様の反復行為も考慮すれば、訴訟制度の趣旨に照らし著しく相当性を欠く。却下しても、適法な手続で裁判を受ける機会が失われるわけではないため、権利の過度な制約にもならない。
結論
事件番号: 令和7(許)18 / 裁判年月日: 令和8年1月28日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】抗告許可申立人が原裁判所に申立書を提出すべきことを認識しながら、不当な目的をもってあえて最高裁判所に提出した場合には、最高裁判所は移送することなく不適法として却下できる。 第1 事案の概要:申立人は弁護士を代理人として選任し、最高裁判所に抗告許可申立書を提出した。本件申立書には、以前にも同様の申立…
本件訴えは、訴訟上の信義則に反し不適法であるため、民訴法317条1項を類推適用し、決定をもって却下する。
実務上の射程
訴訟制度を殊更に攪乱するような異常な訴えに対する、信義則を用いた訴訟終了の判断枠組みを示すものである。民訴法上の明文の却下事由に直接該当しない場合でも、権利濫用的側面が著しい場合には、本判決の法理を援用して不適法却下を導くことが可能となる。
事件番号: 平成16(受)247 / 裁判年月日: 平成16年11月18日 / 結論: 破棄自判
有責配偶者である夫からの離婚請求において,夫婦の別居期間が,事実審の口頭弁論終結時に至るまで約2年4か月であり,双方の年齢や約6年7か月という同居期間との対比において相当の長期間に及んでいるとはいえないこと,夫婦間には7歳の未成熟の子が存在すること,妻が,子宮内膜症にり患しているため就職して収入を得ることが困難であり,…