判旨
夫婦の一方の行為が、その地位に伴う利益擁護のため必要やむを得ずに出たものである場合、方法や程度に妥当を欠く点があっても、直ちに「同居に堪えない虐待又は重大な侮辱」には該当しない。
問題の所在(論点)
民法上の離婚原因である「同居に堪えない虐待又は重大な侮辱」の存否について、行為の態様に不適切な点がある場合でも、その目的や必要性を考慮して違法性や有責性を否定し得るか。
規範
「同居に堪えない虐待又は重大な侮辱」(現行民法770条1項4号参照)の有無の判断にあたっては、当該行為に至る経緯や目的、行為者の地位、及びその必要性を総合的に考慮すべきである。特に、配偶者としての地位に伴う正当な利益を擁護するために必要やむを得ずに行われた行為であれば、態様が不適切であっても直ちに離婚原因とは認められない。
重要事実
夫(上告人)が妻(被上告人)に対し、妻の特定の所為を理由として離婚を求めた。当該行為は、妻であり二人の子の母である被上告人が、その地位に伴う利益を擁護するために行ったものであった。しかし、その具体的な方法や程度については、些か妥当を欠く部分が含まれていた。
あてはめ
本件における被上告人の行為は、妻および母としての地位に基づき、自らの利益を擁護するために必要やむを得ずに行われたものである。その方法や程度に多少の不適切さが認められるとしても、背景にある必要性を重視すれば、上告人に離婚請求権を取得させるほどの「虐待又は重大な侮辱」に達しているとは評価できない。これは正当防衛の理論を直ちに適用するものではないが、行為の正当な目的と必要性により、離婚原因としての評価を否定したものである。
結論
被上告人の行為は「同居に堪えない虐待又は重大な侮辱」に該当せず、上告人の離婚請求は認められない。
実務上の射程
離婚原因の認定において、形式的な暴言・暴力等の態様のみならず、その動機や目的、地位に基づく自己防衛的な側面を考慮する実務上の指針となる。答案上は、有責配偶者の認定や「婚姻を継続し難い重大な事由」の判断において、対抗的・防衛的行為の評価を論じる際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和24(オ)187 / 裁判年月日: 昭和27年2月19日 / 結論: 棄却
夫が妻を差し措いて他に情婦を持ち、それがもとで妻との婚姻関係継続が困難になつた場合、それだけで夫の側から民法第七七〇条第一項第五号によつて離婚を請求することは許されない。
事件番号: 昭和27(オ)605 / 裁判年月日: 昭和27年10月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が民事上告事件の審判の特例に関する法律所定の事由に該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張も含まない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:上告人が提起した民事上告事件において、上告理由として主張された内容が、当時の民事上告特例法に規定された上告受理の要件、あるいは法令解釈…