行政機関の保有する情報の公開に関する法律(令和3年法律第37号による改正前のもの)に基づく開示請求がされた行政文書の存否を答えるだけで、同法5条1号及び4号所定の不開示情報を開示することになるとして、当該文書の存否を明らかにしないでされた全部不開示決定について、当該文書の存否を答えるだけで、同各号所定の不開示情報を開示することとなるかについて判断せず、これを適法であるとした原判決に理由の不備の違法があるとされた事例
判旨
行政機関の保有する情報の公開に関する法律8条に基づく存否を明らかにしない拒否(グローマー拒否)の適否が争われる場合、裁判所は、当該文書の存否を答えるだけで不開示情報を開示することになるか否かを判断しなければならず、これを欠く判決には理由不備の違法がある。
問題の所在(論点)
情報公開法8条(存否を明らかにしない拒否)に基づく不開示決定の適法性を判断するにあたり、裁判所は「文書の存否を答えるだけで不開示情報を開示することになるか」という点について判断を示す必要があるか。
規範
情報公開法8条に基づく不開示決定が適法であるというためには、①当該文書に記録されている情報が同法5条各号所定の不開示情報に該当することに加え、②当該開示請求に対し、当該文書が存在するかしないかを答えるだけで、不開示情報を開示することになるという要件を満たす必要がある。
重要事実
上告人が、亡Aに係る死刑執行上申書及びその添付書類(本件文書)の開示請求を行ったところ、法務大臣は、本件文書の存否を答えるだけで法5条1号(個人情報)及び4号(公共の安全等)所定の不開示情報を開示することになるとして、法8条に基づき存否を明らかにせずに不開示とする決定(本件決定)を行った。これに対し上告人が、本件決定の取消し等を求めて提訴した事案である。
あてはめ
原審は、本件文書に記録されている情報が法5条1号及び4号の不開示情報に該当するとの点のみを理由に本件決定を適法とした。しかし、本件決定は法8条に基づくものである以上、不開示情報該当性(①)のみならず、存否を答えることで不開示情報を開示することになるか(②)が争点となる。本件において上告人はこの点についても主張していたにもかかわらず、原審は判断を遺脱しており、審理不尽・理由不備の違法がある。
事件番号: 令和6(行ヒ)94 / 裁判年月日: 令和7年6月6日 / 結論: 破棄差戻
消費者庁が外部の機関に委託した機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業の報告書に記録された、検証の手法や基準、検証結果(データ)、考察内容、問題点等の情報について、上記報告書に、上記機関が消費者庁の定めた機能性表示食品の届出等に関するガイドラインにどのように依拠したかを示すような情報が記録されていることをうか…
結論
本件決定の適法性を判断する上で不可欠な「存否を答えるだけで不開示情報を開示することになるか」という点について判断を欠いた原判決には理由不備の違法があり、破棄を免れない。
実務上の射程
行政事件訴訟法上の理由不備の類型として、情報公開法8条の要件充足性を審理する際の裁判所の義務を明確にしたもの。答案上、グローマー拒否の適法性が争点となる場合は、単なる5条各号の該当性だけでなく、8条特有の要件(存否を答えること自体の弊害)についても独立して検討・判示しなければならないことを示す際に活用する。
事件番号: 令和2(行ヒ)340 / 裁判年月日: 令和4年5月17日 / 結論: その他
預託法(平成21年法律第49号による改正前のもの)違反及び景表法(平成26年法律第71号による改正前のもの)違反に係る調査の結果に関する情報について、当該情報を公にすることにより、消費者庁長官等が上記各法律の執行に係る判断をするに当たり、いかなる事実関係をいかなる手法により調査し、調査により把握した事実関係のうちいかな…
事件番号: 平成24(行ヒ)33 / 裁判年月日: 平成26年7月14日 / 結論: 棄却
開示請求の対象とされた行政文書を行政機関が保有していないことを理由とする不開示決定の取消訴訟においては,その取消しを求める者が,当該不開示決定時に当該行政機関が当該行政文書を保有していたことについて主張立証責任を負う。
事件番号: 令和4(行ヒ)296 / 裁判年月日: 令和5年10月26日 / 結論: 破棄自判
矯正管区長が、刑事施設に収容されている者が収容中に受けた診療に関する保有個人情報について、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(令和3年法律第37号による廃止前のもの)45条1項所定の保有個人情報に当たるとの見解に立脚し、その全部を開示しない旨の決定をした場合において、上記決定当時、公表されていた裁判例や情報公…
事件番号: 平成20(行ヒ)67 / 裁判年月日: 平成23年10月14日 / 結論: 破棄自判
エネルギーの使用の合理化に関する法律(平成17年法律第93号による改正前のもの)11条の規定により製造業の事業者が経済産業局長に提出した定期報告書に記載された工場単位の各種の燃料等及び電気の使用量等の各数値を示す情報が次の(1)及び(2)のようなものであったという事実関係の下では,当該情報は,情報公開法5条2号イ所定の…