預託法(平成21年法律第49号による改正前のもの)違反及び景表法(平成26年法律第71号による改正前のもの)違反に係る調査の結果に関する情報について、当該情報を公にすることにより、消費者庁長官等が上記各法律の執行に係る判断をするに当たり、いかなる事実関係をいかなる手法により調査し、調査により把握した事実関係のうちいかなる点を重視するかなどの着眼点や手法等を推知され、将来の調査に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれがあるといえるか否かという観点から審理を尽くすことなく、当該情報が上記各違反に係る調査の結果に関するものであることから直ちに情報公開法(平成26年法律第67号による改正前のもの)5条6号イ所定の不開示情報に該当しないとした原審の判断には、違法がある。 (補足意見がある。)
預託法(平成21年法律第49号による改正前のもの)違反及び景表法(平成26年法律第71号による改正前のもの)違反に係る調査の結果に関する情報が情報公開法(平成26年法律第67号による改正前のもの)5条6号イ所定の不開示情報に該当しないとした原審の判断に違法があるとされた事例
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)(平成26年法律第67号による改正前のもの)5条6号イ、特定商品等の預託等取引契約に関する法律(預託法)(平成21年法律第49号による改正前のもの)10条1項、特定商品等の預託等取引契約に関する法律(預託法)10条1項、不当景品類及び不当表示防止法(景表法)(平成26年法律第71号による改正前のもの)9条1項
判旨
行政機関が保有する調査結果等の客観的事実に関する情報であっても、その記載内容や重点の置き方から調査の着眼点や手法が推知され、将来の調査の実効性を失わせるおそれがある場合には、情報公開法5条6号イ所定の不開示情報に該当し得る。また、不開示該当性の判断に当たっては、文書内の項目ごとに異なる内容の情報が記録されている可能性を考慮し、個別に吟味すべきである。
問題の所在(論点)
預託法や景表法違反に係る調査の結果等の「客観的な事実」に関する情報が、情報公開法5条6号イ所定の不開示情報(事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報)に該当するか。また、文書内に異なる性質の情報が含まれる場合、項目ごとに不開示該当性を判断すべきか。
規範
情報公開法5条6号イにいう「事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」の有無は、当該情報を公にすることにより、将来の調査に係る事務に関し、(1)正確な事実の把握を困難にするおそれ、又は(2)違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれがあるか否かにより判断する。客観的な事実に関する情報であっても、調査目的が反映された報告書等の分析を通じて調査の着眼点や手法が推知される場合には、上記のおそれがあるといえる。また、複数の情報が含まれる文書については、一律に判断せず、個別の項目ごとに不開示事由の有無を吟味しなければならない。
事件番号: 令和6(行ヒ)94 / 裁判年月日: 令和7年6月6日 / 結論: 破棄差戻
消費者庁が外部の機関に委託した機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業の報告書に記録された、検証の手法や基準、検証結果(データ)、考察内容、問題点等の情報について、上記報告書に、上記機関が消費者庁の定めた機能性表示食品の届出等に関するガイドラインにどのように依拠したかを示すような情報が記録されていることをうか…
重要事実
被上告人が消費者庁長官に対し、和牛の預託商法を行っていた安愚楽牧場に関する行政文書の開示を請求した。対象文書には、(1)消費者庁が法的措置を検討するために作成した思考過程を含む検討文書(目録1, 2)、(2)農水省職員による立入検査の結果や追加調査の報告書(目録3〜10)、(3)措置命令に先立ち弁護士等から聴取したやり取りの概要(目録11)が含まれていた。原審は、客観的事実に関する情報は将来の調査に支障を及ぼす蓋然性がないとして、(2)及び(3)の開示を認める一方、(1)については一体的に不開示としたため、双方が上告・附帯上告した。
あてはめ
預託法等の規制潜脱を図る業者は、行政の調査手法や着眼点に高度の関心を寄せている。調査結果をまとめた報告書等に記録された情報には、客観的事実であっても、どの事実に重点を置いて記載されているかという調査担当者の意図が反映される。これを開示すれば、業者が分析により手法を推知し、将来の資料隠蔽や改ざんを容易にするなど、調査の実効性を失わせるおそれがある。本件各文書についても、単に客観的事実であるからといって直ちに開示を認めるのは妥当ではない。また、目録1, 2の文書には契約内容の事実関係と今後の検討事項という異なる情報が含まれており、これらを個別に精査せず一体的に不開示とした原審の判断には、不開示範囲を不当に広げる法令違反がある。
結論
客観的事実に関する情報であっても、将来の調査に支障を及ぼすおそれがある場合は不開示情報に該当し得る。また、不開示該当性は文書の項目ごとに個別に審理すべきであるとして、原判決を破棄し差し戻した。
実務上の射程
行政調査に関する情報公開請求において、行政側が「手法の推知」を理由に不開示とする際の判断枠組みを示したものである。答案上は、情報の性質(客観的事実か否か)だけでなく、その開示が将来の事務に与える具体的影響(着眼点の推知等)を検討する際の規範として活用する。また、部分開示の原則(同法6条)との関係で、項目ごとの個別審査の必要性を論じる際にも参照できる。
事件番号: 平成20(行ヒ)67 / 裁判年月日: 平成23年10月14日 / 結論: 破棄自判
エネルギーの使用の合理化に関する法律(平成17年法律第93号による改正前のもの)11条の規定により製造業の事業者が経済産業局長に提出した定期報告書に記載された工場単位の各種の燃料等及び電気の使用量等の各数値を示す情報が次の(1)及び(2)のようなものであったという事実関係の下では,当該情報は,情報公開法5条2号イ所定の…
事件番号: 令和7(行ツ)72 / 裁判年月日: 令和8年1月27日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】行政機関の保有する情報の公開に関する法律8条に基づく存否を明らかにしない拒否(グローマー拒否)の適否が争われる場合、裁判所は、当該文書の存否を答えるだけで不開示情報を開示することになるか否かを判断しなければならず、これを欠く判決には理由不備の違法がある。 第1 事案の概要:上告人が、亡Aに係る死刑…
事件番号: 平成9(行ツ)241 / 裁判年月日: 平成13年11月27日 / 結論: 棄却
学校法人が栃木県に提出した前年度収支計算書のうち資金収支計算書及び消費収支計算書における各決算欄の大科目部分並びに貸借対照表における本年度末欄,前年度末欄及び増減欄の各大科目部分に記載された情報は,その分析によって当該法人の競争上の地位を害するような独自の経営上のノウハウ等を看取することが困難であり,その内容が客観的に…
事件番号: 平成19(行ヒ)270 / 裁判年月日: 平成21年7月9日 / 結論: 破棄自判
凶悪重大犯罪等に係る出所情報ファイルを犯罪捜査に有効活用すること等を要請する警察庁から県警察本部長あての通達文書に記録された情報のうち,同ファイルの記録対象者を限定する入所罪名及び出所事由の種別に係る情報は,これが公にされた場合,行刑施設の出所者において自己が同ファイルの記録対象とされるか否かについて確実な判別をするこ…