開示請求の対象とされた行政文書を行政機関が保有していないことを理由とする不開示決定の取消訴訟においては,その取消しを求める者が,当該不開示決定時に当該行政機関が当該行政文書を保有していたことについて主張立証責任を負う。
開示請求の対象とされた行政文書を行政機関が保有していないことを理由とする不開示決定の取消訴訟における当該不開示決定時に当該行政機関が当該行政文書を保有していたことの主張立証責任
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成21年法律第66号による改正前のもの)2条2項,行政機関の保有する情報の公開に関する法律3条,行政機関の保有する情報の公開に関する法律9条2項,民訴法第2編第4章第1節 総則
判旨
行政文書の不開示決定取消訴訟において、当該文書の保有に関する主張立証責任は原告が負う。作成・取得の事実から不開示決定時の保有を推認できるかは、文書の性質、経過期間、保管体制等を個別具体的に検討すべきである。
問題の所在(論点)
行政文書の不開示決定取消訴訟において、行政機関による文書の保有に関する主張立証責任はどちらが負うか。また、過去に作成された文書の決定時における保有をいかに推認すべきか。
規範
行政文書の開示請求権は、当該行政機関が文書を保有していることを成立要件とする(情報公開法3条)。したがって、不開示決定の取消訴訟においては、取消しを求める者が、決定時に行政機関が当該文書を保有していたことについて主張立証責任を負う。ある時点での作成・取得が立証された場合に、決定時の保有を推認できるかは、文書の内容・性質、作成・取得の経緯、決定時までの期間、保管の体制・状況等に応じて個別具体的に検討すべきである。特に外交交渉文書については、保管体制が通常と異なる場合があることも考慮すべきである。
重要事実
上告人らは、沖縄返還(昭和47年)に伴う財政負担等をめぐる日米交渉(本件交渉)の内容に関する文書(本件各文書)につき、外務大臣および財務大臣に対し開示請求を行った。これに対し、両大臣は当該文書を保有していないとして不開示決定(本件各決定)をしたため、上告人らがその取消し等を求めて提訴した。
事件番号: 令和7(行ツ)72 / 裁判年月日: 令和8年1月27日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】行政機関の保有する情報の公開に関する法律8条に基づく存否を明らかにしない拒否(グローマー拒否)の適否が争われる場合、裁判所は、当該文書の存否を答えるだけで不開示情報を開示することになるか否かを判断しなければならず、これを欠く判決には理由不備の違法がある。 第1 事案の概要:上告人が、亡Aに係る死刑…
あてはめ
本件各文書は、約40年前の外交交渉過程で作成されたとされるものである。本件では、開示請求の内容からうかがわれる文書の性質、作成経緯、決定時までに経過した長期間の年数に加え、外務省・財務省における保管体制や状況に関する調査結果が検討された。これらの諸事情に照らせば、仮に交渉当時に関係職員が文書を作成したことがあったとしても、本件各決定時においてなお両省がこれを保有していたことを推認するには足りない。
結論
行政機関が本件各決定時に本件各文書を保有していたとは認められないため、不開示決定は適法である。上告棄却。
実務上の射程
行政文書の存否が争われる事案における立証責任の所在と、推認の判断枠組みを明示した。答案上は、まず原告側に立証責任があることを示し、次に「作成・取得の事実」から「決定時の保有」を導く際の判断要素として、本判決が挙げた5つの要素(内容・性質、経緯、期間、保管体制、状況)をあてはめるべきである。
事件番号: 平成2(行ツ)149 / 裁判年月日: 平成6年2月8日 / 結論: 棄却
大阪府水道部が事業の施行のために行った懇談会等に係る支出伝票及びこれに添付された債権者の請求書と経費支出伺は、右懇談会等が事業の施行のために必要な事項についての関係者との内密の協議を目的として行われたものであり、かつ、右文書を公開することによってその相手方等が了知される可能性があることについて、その判断を可能とする程度…
事件番号: 平成13(行ヒ)106 / 裁判年月日: 平成15年6月10日 / 結論: 破棄差戻
福岡県財務規則(昭和39年福岡県規則第23号。平成9年福岡県規則第82号による改正前のもの)131条2項が収入及び支出に係る証拠書類の保存の主体を含めた文書管理の方法を別に定めるところにゆだねており,福岡県警察本部総務課,同県議会議員及び同事務局に関する懇談会費及び旅費の支出に係る証拠書類が同県出納事務局から同県警察本…
事件番号: 平成11(行ヒ)221 / 裁判年月日: 平成13年12月14日 / 結論: 破棄差戻
1 旧徳島県情報公開条例(平成元年徳島県条例第5号。平成13年徳島県条例第1号による全部改正前のもの)による公開請求の対象となる公文書の範囲を規定している同条例2条1項にいう「実施機関が管理している」とは,実施機関が公文書を現実に支配,管理していることを意味する。 2 徳島県の予算執行事務の権限が知事に属することから直…
事件番号: 平成29(行ヒ)46 / 裁判年月日: 平成30年1月19日 / 結論: その他
1 内閣官房報償費の支出に関する報償費支払明細書に記録された調査情報対策費及び活動関係費の各支払年月日,支払金額等を示す情報は,これが明らかになると,当該時期の国内外の政治情勢や政策課題,内閣官房において対応するものと推測される重要な出来事,内閣官房長官の行動等の内容いかんによっては,これらに関する情報との照合や分析等…