1 預り金を信託財産に属すべきものと定めた信託契約に関し、信託の目的についての合意が成立したことの主張があるとはいえないとされた事例 2 預金債権の債権者が信託法23条5項の規定による異議に係る訴えを提起した場合、上記預金債権が信託財産に属する財産であるか否かは事実審の口頭弁論終結時を基準として判断される
判旨
弁護士の預り金口座に係る預金債権について信託の成立を主張するには、信託の目的等について具体的な主張を要し、かつ、信託財産であるか否かの判断基準時は事実審の口頭弁論終結時である。
問題の所在(論点)
1. 信託契約の成立を基礎付ける「信託の目的」について、どの程度の具体的な主張が必要か。 2. 第三者異議の訴えにおいて、当該財産が信託財産に属するか否かの判断基準時はいつか。
規範
1. 信託契約(信託法3条1号)の成立には「信託の目的」についての合意を要し、訴訟でこれが争われる場合、当事者が主張立証を尽くせるよう事案に応じて具体的に主張される必要がある。2. 信託法23条5項の異議の訴えにおいて、対象債権が信託財産に属するか否かは、事実審の口頭弁論終結時を基準として判断すべきである。
重要事実
弁護士である被上告人は、依頼者からの預り金を管理するため、自己の固有財産とは別に「預かり金口」名義の口座を開設・管理していた。上告人が、被上告人に対する婚姻費用分担金債権を請求債権として当該口座の預金債権を差し押さえたところ、被上告人は、当該預金は依頼者との信託契約に基づく信託財産であり差し押さえられない(信託法23条5項)として第三者異議の訴えを提起した。被上告人は秘密保持義務を理由に信託の具体的な目的を明示しなかったが、原審は分別管理の事実のみから信託成立を認め、差押時を基準に請求を認容したため、上告人が上告した。
あてはめ
1. 被上告人は預り金の具体的目的を明示せず、提出された証拠からも目的を把握できない。このような状態では相手方の防御が著しく困難であり、弁護士の秘密保持義務を考慮しても、信託の目的の合意が具体的に主張されているとはいえない。2. 差押え後に預金債権が受託者の固有財産に属するに至った場合、信託財産であることを理由とする異議の主張は認められなくなる。したがって、判断基準時を通常の民事訴訟と別異に解する根拠はなく、事実審の口頭弁論終結時を基準とすべきである。
結論
信託の目的の合意について具体的な主張がなく信託成立は認められない。また、判断基準時は差押時ではなく事実審の口頭弁論終結時である。原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
弁護士の預り金口座に対する強制執行阻止を狙った事案であるが、単なる「分別管理」や「預り金」という呼称だけでは不十分であり、秘密保持に配慮しつつも信託の目的等を具体的に主張立証させる実務指針を示した。また、差押後に預り金が報酬に充当されるなどして固有財産化した場合には異議が認められないことを明確にした点に射程がある。
事件番号: 平成10(オ)989 / 裁判年月日: 平成13年11月22日 / 結論: 棄却
遺留分減殺請求権は,遺留分権利者が,これを第三者に譲渡するなど,権利行使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合を除き,債権者代位の目的とすることができない。