一 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は右譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、右対抗要件具備の効力は、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物に及ぶ。 二 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権者は、特段の事情のない限り、第三者異議の訴えによつて、動産売買先取特権者が右集合物の構成部分となつた動産についてした競売の不許を求めることができる。 三 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において、目的動産の種類及び量的範囲が普通棒鋼、異形棒鋼等一切の在庫商品と、その所在場所が譲渡担保権設定者の倉庫内及び同敷地・ヤード内と指定されているときは、目的物の範囲が特定されているものというべきである。
一 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の対抗要件と構成部分の変動した後の集合物に対する効力 二 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権と動産売買先取特権に基づいてされた動産競売の不許を求める第三者異議の訴え 三 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において目的物の範囲が特定されているとされた事例
民法85条,民法178条,民法181条,民法183条,民法333条,民法369条(譲渡担保),民訴法(昭和54年法律第4号による改正前のもの)549条1項,競売法3条
判旨
構成部分が変動する集合動産であっても、種類、所在場所、量的範囲が特定されている場合は、一個の集合物として譲渡担保権の目的とすることができる。譲渡担保権者が対抗要件を備えれば、その後に構成部分となった動産についても、集合物としての同一性が保たれる限り効力が及び、当該動産への先取特権行使を阻止できる。
問題の所在(論点)
構成部分が変動する集合動産譲渡担保の有効性と対抗要件の効力範囲、および譲渡担保権者が民法333条の「第三取得者」として動産売買先取特権の追求を阻めるか。
規範
1. 構成部分が変動する集合動産であっても、種類、所在場所、および量的範囲を指定する方法等で目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保権の目的となる。 2. 占有改定により対抗要件を具備した効力は、集合物としての同一性が損なわれない限り、その後に新たに構成部分となった動産にも及ぶ。 3. この場合、譲渡担保権者は民法333条所定の「第三取得者」に該当し、特段の事情がない限り、動産売買先取特権者による競売を不許とすることができる。
重要事実
債務者(訴外会社)は、債権者(被上告人)との間で、特定の倉庫内等にある「普通棒鋼、異形棒鋼等一切の在庫商品」を目的とする集合動産譲渡担保設定契約を締結し、占有改定により引渡しを完了した。その後、別の販売業者(上告人)が債務者に異形棒鋼(本件物件)を販売し、これを当該倉庫内に搬入させた。販売業者は、本件物件について動産売買の先取特権に基づき競売を申し立てたため、譲渡担保権者がその不許を求めて提訴した。
あてはめ
本件契約では、商品の種類(普通棒鋼等)、所在場所(特定の倉庫・敷地内)、量的範囲(一切の在庫商品)が明確に指定されており、一個の集合物として特定されている。また、占有取得時に占有改定の合意がある以上、譲渡担保権者は対抗要件を具備している。本件物件が倉庫に搬入されたことで集合物の構成部分となった際、集合物としての同一性は維持されているため、譲渡担保権の対抗力は本件物件にも及ぶ。したがって、譲渡担保権者は民法333条の「第三取得者」として、上告人による先取特権の実行(競売)を阻止できる。
結論
集合動産譲渡担保権は有効であり、対抗要件を備えた後は、新たに取り込まれた構成部分についても譲渡担保権の効力が優先する。したがって、債権者は民法333条に基づき動産競売の不許を求めることができる。
実務上の射程
集合動産譲渡担保の「特定」の要件(種類、場所、量的範囲)を示すリーディングケースである。答案上は、まず譲渡担保の有効性を論じ、次に占有改定による対抗要件の具備を指摘した上で、その効力が「搬入」という事実により後から入ってきた動産にも及ぶ(同一性)というロジックで活用する。先取特権との劣後関係では、民法333条を介して「引渡し」の有無を判断基準とする。
事件番号: 昭和53(オ)1463 / 裁判年月日: 昭和56年12月17日 / 結論: 棄却
一 譲渡担保権者は、特段の事情がない限り、第三者異議の訴えによつて目的物件に対し譲渡担保権設定者の一般債権者がした強制執行の排除を求めることができる。 二 譲渡担保権者は、目的物件につき自己の債権者のために更に譲渡担保権を設定したのちにおいても、第三者異議の訴えによつて目的物件に対し原譲渡担保権設定者の一般債権者がした…