譲渡担保設定者の店舗・居宅内に存すべき運搬具、什器、備品、家財一切のうち右設定者所有の物を目的とする譲渡担保契約は、その契約成立の要件としての目的物の外部的、客観的な特定に欠ける。
集合動産の譲渡担保につき目的物の特定を欠くとされた事例
民法369条(譲渡担保)
判旨
集合動産譲渡担保において、目的物の種類、所在場所、量的範囲が指定されていても、構成部分の変動が予定されている場合に他の物件と識別できる指標や措置が欠けていれば、目的物の特定を欠き契約は成立しない。
問題の所在(論点)
種類・所在場所・量的範囲が指定された集合動産譲渡担保において、対象が「債務者所有の家財一切」等と抽象的に示されているに過ぎない場合、目的物の特定があったといえるか。
規範
集合動産譲渡担保契約が成立するためには、目的物の外部的・客観的な特定が必要である。具体的には、目的物の種類、所在場所及び量的範囲を指定することによって、目的物の範囲が他の物件と識別し得る程度に特定されていなければならない。
重要事実
上告人は、債務者Dが特定の建物内に納置する商品、運搬具、什器、備品、家財一切を目的とする譲渡担保契約を締結し、占有改定を受けた。契約では、通常の営業範囲内での処分が認められる一方で、将来搬入されるD所有の物件も当然に担保目的物に含まれるとされていた。しかし、本件建物内に存する家具・器具類(本件物件)について、契約締結時から差押えに至るまで、D所有の物とそれ以外の物を識別するための具体的な指標や別段の特定方法は講じられていなかった。
あてはめ
本件契約では、所在場所等は指定されているが、目的物の一つである「家財一切」は多種多様であり、これだけでは個々の物件の該当性を識別することは困難である。また、建物内の物品のうち「債務者所有の物」に限定されているにもかかわらず、第三者の所有物等と明確に識別する指標が示されておらず、現実的な区別の措置も講じられていない。したがって、目的物の外部的・客観的な特定を欠くといえる。
結論
本件譲渡担保契約は目的物の特定を欠き成立しないため、上告人は本件物件が目的物であることを主張して強制執行の排除を求めることはできない。
実務上の射程
集合物譲渡担保の有効性に関するリーディングケース。答案では「種類・場所・量的範囲」による特定が必要であることを示した上で、本判決のように「債務者所有の物」という限定が識別を困難にしている場合には、特定を否定する方向で検討すべきである。後の判例(最判昭62.11.10等)では、より緩やかに特定を認める傾向にあるが、本判決は「識別可能性」という基本原理を示すものとして重要である。
事件番号: 昭和44(オ)458 / 裁判年月日: 昭和47年5月25日 / 結論: 棄却
売主がb港において売買の目的物たる木材を引き渡すべき義務を負担する種類売買においては、木材が積出港たるa港の土場に集積されたからといつて、売買の目的物が右木材に特定されたものということはできない。