一 譲渡担保権者は、特段の事情がない限り、第三者異議の訴えによつて目的物件に対し譲渡担保権設定者の一般債権者がした強制執行の排除を求めることができる。 二 譲渡担保権者は、目的物件につき自己の債権者のために更に譲渡担保権を設定したのちにおいても、第三者異議の訴えによつて目的物件に対し原譲渡担保権設定者の一般債権者がした強制執行の排除を求めることができる。
一 譲渡担保権者と第三者異議の訴え 二 譲渡担保権者が目的物件につき自己の債権者のために更に譲渡担保権を設定した場合と第三者異議の訴え
民法369条(譲渡担保),民訴法(昭和54年法律第4号による改正前のもの)549条1項,民事執行法38条1項
判旨
譲渡担保権者は、目的物件をさらに他者へ譲渡担保に供した後であっても、設定者の一般債権者がした強制執行の排除を求めることができる。これは、再譲渡担保の設定後も、譲渡担保権者は担保権自体を失わず、自ら債務を弁済して物件を取り戻し債権の満足を得るという固有の利益を有するためである。
問題の所在(論点)
譲渡担保権者が目的物件をさらに第三者へ譲渡担保(再譲渡担保)に供した場合、当該譲渡担保権者は依然として、設定者の一般債権者による強制執行を排除する「権利」(民事執行法38条1項の他人の所有権その他執行を妨げる権利)を有するか。
規範
1. 譲渡担保権者は、特段の事情がない限り、譲渡担保権者たる地位に基づき、目的物件に対し設定者の一般債権者がした強制執行の排除を求めることができる(第三者異議の訴え)。 2. 譲渡担保権者が目的物件を自己の債権者のために更に譲渡担保に供した(再譲渡担保)場合であっても、右譲渡担保権者は自己の担保権自体を失うものではない。したがって、自己の債務を弁済して物件を取り戻し、自己の債権の満足を得る等の担保権実行についての固有の利益を有する限り、依然として強制執行を排除する権利を保有する。
重要事実
1. 設定者Dは、債権者(被上告人)に対し、加工賃等の債務の支払を担保するため、本件物件(成型機)を譲渡担保に供し、占有改定により引き渡した。 2. Dが債務不履行に陥ったため、被上告人は物件を搬出し、さらに自己の債務を担保するため、G社に対し本件物件を再譲渡担保に供した。 3. Dの別の債権者である上告人が、本件物件に対し強制執行(照査手続)を実施したため、被上告人がその排除を求めて提訴した。
あてはめ
1. 被上告人は、Dとの間の譲渡担保契約に基づき本件物件の権利を取得しており、特段の事情がない限り、Dの債権者による執行を排除できる立場にある。 2. 被上告人がG社に対し再譲渡担保を設定した後も、被上告人は担保権を完全に喪失したわけではない。被上告人はG社への債務を弁済することで物件を取り戻し、Dに対する自己の債権の回収を図ることができる固有の法的利益を保持している。 3. 本件において、譲渡担保権者による執行排除を否定すべき「特段の事情」は主張・立証されていない。
結論
被上告人は、再譲渡担保設定後であっても、設定者Dの債権者による強制執行の排除を求めることができる。
実務上の射程
譲渡担保権者が「所有権的構成」に近い地位を有することを前提としつつ、再譲渡担保という二重の担保関係下でも第一譲渡担保権者の法的地位(第三者異議の権利)を肯定した点に意義がある。答案上は、譲渡担保の法的性質論と絡めて、執行排除の基礎となる「固有の利益」の有無を論証する際に用いる。
事件番号: 昭和57(オ)1408 / 裁判年月日: 昭和62年11月10日 / 結論: 棄却
一 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は右譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、右対…