仮登記権利者は、本登記に必要な要件を具備した場合でも、本登記を経由しないかぎり、自己の所有権を主張して第三者異議の訴を提起することは許されない。
仮登記権利者と第三者異議の訴
民訴法549条,不動産登記法7条
判旨
所有権移転の仮登記権利者は、たとえ本登記に必要な要件を具備していたとしても、本登記を経由しない限り、当該物件を差し押さえた債権者に対して所有権を対抗できず、第三者異議の訴えを提起することはできない。
問題の所在(論点)
所有権移転の仮登記権利者が、本登記に必要な要件を具備している場合、本登記を経由しなくとも、当該不動産の差押債権者に対して所有権を主張して第三者異議の訴え(民事執行法38条1項)を提起できるか。
規範
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法に定めるところに従い登記をしなければ、第三者に対抗することができない(民法177条)。仮登記は将来の登記の順位を保全する効力を持つにすぎず、対抗要件としての効力を有しないため、本登記を欠く状態で差押債権者等の第三者に権利を主張することはできない。
重要事実
本件において、上告人(仮登記権利者)は、対象不動産について所有権移転の仮登記を経由していた。その後、上告人は本登記に必要な要件を具備するに至ったが、現実に本登記を経由していなかった。この状況下で、被上告人(差押債権者)が当該不動産に対して強制執行(差押え)を行ったため、上告人は自己の所有権に基づき執行の排除を求めて第三者異議の訴えを提起した。
あてはめ
上告人は、本登記に必要な実体的・手続的要件を具備していたとしても、現実に本登記を経由していない。民法177条の「第三者」には差押債権者も含まれるところ、仮登記のみでは対抗要件として不十分である。したがって、上告人は被上告人に対し、当該不動産の所有権を対抗できる「強制執行を許さない権利」を有しているとはいえない。
結論
仮登記権利者は、本登記を経由しない限り、差押債権者に対し所有権を主張して第三者異議の訴えを提起し、強制執行の排除を求めることはできない。
実務上の射程
仮登記の対抗力の限界を明示した判例である。答案上では、仮登記権利者が実体法上の権利を有していても、本登記がなされるまでは177条の第三者に対して無効であることを論じる際に用いる。また、本登記未了の譲受人と差押債権者の優劣という一般的な対抗問題の文脈でも参照される。
事件番号: 昭和44(オ)755 / 裁判年月日: 昭和48年2月15日 / 結論: 棄却
一、建物に対する債務者の占有を解いて執行官の保管に付し、現状不変更を条件として債権者に使用を許す旨の仮処分の執行に対し、右建物の所有者は、これを仮処分債務者に賃貸占有させている場合でも、第三者異議の訴を提起することができる。 二、第一審において全部勝訴の判決を得た原告も、控訴審において、附帯控訴の方式により請求を拡張し…