債権の一部を被保全債権として仮差押のなされた不動産の譲渡を受けた第三者は、右仮差押が本差押に移行した場合においても、被保全債権の弁済をすることにより、仮差押債権者に対する関係においても、完全に不動産の所有権を取得し、仮差押債権の右不動産に対する強制執行は、債務者以外の第三者の所有物件についてなされたこととなり、許されない。
債権の一部を被保全債権として仮差押のなされた不動産の譲渡を受けた第三者が本差押手続中に被保全債権の弁済をした場合における強制執行続行の許否。
民訴法737条,民訴法549条
判旨
債権の一部を被保全債権とする不動産仮差押え後、当該不動産を取得した第三者は、仮差押えの被保全債権額を弁済すれば、仮差押債権者に対し完全に所有権を主張できる。
問題の所在(論点)
不動産の仮差押え後に所有権を取得した第三取得者が、仮差押えの効力を排除するために弁済すべき範囲は、仮差押登記に表示された被保全債権額に限られるか、それとも債権者が債務者に対して有する債権全額に及ぶか。
規範
債権者が債権の一部を被保全債権として不動産を仮差押えした後、当該不動産が第三者に譲渡された場合、第三取得者は、被保全債権額の範囲内においてのみ仮差押債権者に所有権を対抗できない。したがって、第三取得者が債務者に代位して被保全債権額を弁済すれば、仮差押債権者に対しても所有権を完全に対抗できるようになり、それを超える債権額に基づく強制執行を拒絶できる。
重要事実
債権者が債権額105万7320円のうち、2万円を被保全債権として不動産を仮差押えした。その後、当該不動産は第三者(上告人ら)に譲渡され、所有権移転登記が経由された。上告人らは債務者に代位して5万円(被保全債権および執行費用等を想定)を弁済供託したが、債権者は被保全債権額を超えた全額の弁済がない限り強制執行は有効であると主張した。
あてはめ
仮差押えの効力は、公示された被保全債権額の範囲で後続の処分を制限するものである。本件では、被保全債権額は2万円とされており、第三取得者はこの範囲で所有権の取得を制限されるにすぎない。上告人らが被保全債権額および執行費用を償うに足りる額(5万円)を弁済供託したのであれば、被保全債権は消滅し、仮差押えの効力も消滅する。この場合、債権者が残債権額(約105万円)を理由に強制執行を続行することは、債務者以外の第三者の所有物件に対して執行を行うことになり、許されない。
結論
第三取得者は、仮差押えの被保全債権額(および執行費用等)を弁済すれば、債権全額を弁済しなくても、当該不動産に対する強制執行の不許を求めることができる。
実務上の射程
仮差押えの相対的効力の範囲を画定する重要判例。民事執行法上の第三者異議の訴えの場面で、請求の根拠(所有権に基づく執行阻止)および弁済による仮差押えの効力消滅を論じる際に活用する。特に一部請求による仮差押えの事案で、登記の公示力を重視する論理として有用である。
事件番号: 昭和44(オ)755 / 裁判年月日: 昭和48年2月15日 / 結論: 棄却
一、建物に対する債務者の占有を解いて執行官の保管に付し、現状不変更を条件として債権者に使用を許す旨の仮処分の執行に対し、右建物の所有者は、これを仮処分債務者に賃貸占有させている場合でも、第三者異議の訴を提起することができる。 二、第一審において全部勝訴の判決を得た原告も、控訴審において、附帯控訴の方式により請求を拡張し…