倉荷証券の発行されている寄託物について、所有権を主張する者が、倉庫営業者を債務者として、右物件の執行官保管、占有移転禁止の仮処分を執行した場合において、倉荷証券の所持人は、単なる寄託契約上倉庫営業者に対して有する右物件の引渡請求権をもつてしては、右仮処分の執行の排除を求めることはできない。
倉荷証券の所持人が倉庫営業者に対して有する寄託契約上の寄託物引渡請求権と第三者異議の訴
民訴法549条,商法604条,商法573条,商法575条
判旨
倉荷証券所持人が倉庫業者に対して有する寄託物引渡請求権は、債権的請求権にすぎない。そのため、第三者が行った仮処分の執行を排除するには、所有権等の対抗可能な権利が必要であり、引渡請求権のみでは第三者異議の訴えを提起できない。
問題の所在(論点)
倉荷証券の所持人が倉庫業者に対して有する「寄託物引渡請求権」のみに基づいて、第三者が当該寄託物に対して行った仮処分執行の排除を求めることができるか(民事執行法38条1項等の「執行を妨げる権利」にあたるか)。
規範
寄託物について倉荷証券が発行されている場合であっても、寄託者が倉庫業者に対して有する引渡請求権は、倉庫業者に対して寄託物の引渡しを求めることができる債権的請求権にすぎない。したがって、当該請求権は直ちに第三者に対抗しうるものではなく、第三者による執行を排除するためには、執行債権者に対抗しうる所有権その他の権利を主張・立証する必要がある。
重要事実
上告人は、倉庫業者である訴外D社との寄託契約に基づき、倉荷証券と引換えに寄託物の返還を求める引渡請求権を有していた。一方、被上告人は、D社を債務者として、当該寄託物に対するD社の占有を解いて執行官に保管させる旨の仮処分を執行した。上告人は、自身が有する倉荷証券に基づく引渡請求権を理由として、右仮処分の執行の排除を求めて提訴した(第三者異議の訴えに相当する請求)。
あてはめ
上告人が主張する権利は、D社という特定の債務者に対して寄託物の引渡しを求める債権的請求権である。仮処分の執行により上告人が現実の引渡しを受けられなくなる不利益が生じるとしても、それは債権の行使が事実上妨げられるにすぎない。上告人は、当該物件について被上告人(仮処分債権者)に対抗しうる所有権などの実体法上の権利を主張していない。したがって、単なる引渡請求権の存在をもって仮処分の執行という公権的行使を阻止することは認められない。
結論
上告人は引渡請求権のみに基づいて本件仮処分の執行排除を求めることはできず、上告人の請求は主張自体失当として棄却される。
実務上の射程
第三者異議の訴えにおける「執行を妨げる権利」の範囲に関する基本判例である。債権的請求権は、原則として第三者による執行を排除する根拠にならないことを示している。答案上は、寄託物の所有権が移転しているか、あるいは債権であっても例外的に対抗力が認められる事情(賃借権の対抗要件具備など)があるかを確認する際の比較対象として活用できる。
事件番号: 昭和44(オ)507 / 裁判年月日: 昭和44年10月28日 / 結論: 棄却
競売法三二条二項により準用される民訴法六八七条によつて発せられた競落不動産の引渡命令に対する不服は、同法五四四条により異議を申し立て、その申立が却下された場合には却下の裁判に対し同法五五八条により即時抗告を申し立てる方法によるべきであり、右引渡命令に対し第三者異議の訴を提起することは許されない。