一、建物に対する債務者の占有を解いて執行官の保管に付し、現状不変更を条件として債権者に使用を許す旨の仮処分の執行に対し、右建物の所有者は、これを仮処分債務者に賃貸占有させている場合でも、第三者異議の訴を提起することができる。 二、第一審において全部勝訴の判決を得た原告も、控訴審において、附帯控訴の方式により請求を拡張して従来の請求に新たな請求を追加することができる。
一、間接占有者たる所有者と執行官保管・債権者使用許可の仮処分の執行に対する第三者異議の訴 二、全部勝訴の原告と控訴審における新請求の追加
民訴法232条,民訴法372条,民訴法549条
判旨
建物の所有者は、その建物の賃借人を債務者とする占有移転禁止の仮処分執行により、所有権の行使を事実上妨げられている場合、執行を受忍すべき正当な理由がない限り、第三者異議の訴えを提起できる。
問題の所在(論点)
建物の賃借人を債務者とする占有移転禁止の仮処分が執行された場合、当該建物の所有者は、民事執行法38条1項の「第三者」として執行の排除を求めることができるか。
規範
強制執行の目的物につき、所有権等に基づきその執行の排除を求める「執行を妨げる権利」(民事執行法38条1項)の有無は、当該執行によって目的物の処分や所有権の行使が事実上障害を受けるか、および債権者に対してその執行を受忍すべき義務があるか否かによって判断される。
重要事実
上告人は、訴外D社(仮処分債務者)を相手方として本件建物の占有移転禁止の仮処分を申請し、執行官に保管させつつ上告人に使用させる旨の決定を得て、その執行を完了した。しかし、本件建物の所有者は被上告人であり、D社は被上告人から賃借して占有していたに過ぎなかった。上告人は、所有者である被上告人に対し、本件建物を占有・使用する正当な権原を有していなかった。そのため、被上告人は上告人に対し、第三者異議の訴えを提起して仮処分の執行取消しを求めた。
あてはめ
本件仮処分の執行により、建物の占有が執行官に移り、さらには上告人に使用権が与えられたことで、所有者である被上告人は、本件建物の処分やその他の所有権行使について事実上の障害を被っている。また、上告人は被上告人に対し本件建物を占有すべき正当な権原を有していないため、被上告人が上告人による仮処分の執行を受忍すべき理由はない。したがって、被上告人は本件執行を妨げる権利を有する「第三者」に該当するといえる。
結論
被上告人は本件仮処分の執行に対し、第三者異議の主張をなしうる。また、第一審で全部勝訴した原告(被上告人)であっても、控訴審において附帯控訴の方式により請求を追加することは適法である。
実務上の射程
占有移転禁止の仮処分であっても、所有権者等の正当な権利行使を妨げる場合には第三者異議の対象となることを明示した。また、民事訴訟法上の論点として、全部勝訴者の附帯控訴による請求拡張(訴の変更)の許容性を認めた実務上重要な先例である。
事件番号: 昭和46(オ)1050 / 裁判年月日: 昭和47年3月24日 / 結論: 棄却
仮登記権利者は、本登記に必要な要件を具備した場合でも、本登記を経由しないかぎり、自己の所有権を主張して第三者異議の訴を提起することは許されない。