建築工事妨害禁止の仮処分(第一次仮処分)の執行後、その仮処分の債務者が、右仮処分の債権者の依頼によつて右建築工事に従事している者を相手方として、右建築中の建物およびその敷地の占有を執行吏に保管させ、右建築工事続行禁止を命ずる等の仮処分(第二次仮処分)をえて、その執行をしたため、第一次仮処分がその実効を失う場合には、第一次仮処分の債権者は、第三者異議の訴によつて、第二次仮処分の執行の排除を求めることができる。
第二次仮処分の執行により第一次仮処分がその実効を失う場合と第三者異議の訴
民訴法549条1項,民訴法755条,民訴法760条
判旨
仮処分の債務者が、正規の不服申立手続によらずに第二の仮処分を得て執行し、第一の仮処分の効力を奪うことは許されない。第一の仮処分で工事妨害禁止の不作為義務を負った者が、工事業者に対して工事中止等を命じる第二の仮処分を執行することは、当該義務に違反し無効である。
問題の所在(論点)
第一次仮処分の債務者が、その内容と抵触する内容の第二次仮処分を第三者に対して申し立て執行することが、第一次仮処分の効力(不作為義務)に違反し、無効な執行として許されないといえるか。
規範
仮処分決定およびその執行に対する不服申立ては、民事訴訟法(現行の民事保全法等)が規定する手続によるべきである。債務者が正規の手続によらず、別途「第二の仮処分」を申請・執行することによって「第一の仮処分」の効力を実質的に奪うことは、法が予定する不服申立制度の趣旨に反し、許されない。
重要事実
上告人(債権者)は被上告人(債務者)に対し、土地の使用・占有および建築工事を妨害してはならない旨の不作為を命ずる仮処分(第一次仮処分)を得た。しかし、被上告人はその翌日、上告人から建築を依頼されていたDを債務者として、工事の中止や占有の解除を命ずる仮処分(第二次仮処分)を得て、これを執行した。上告人は、第二次仮処分は第一次仮処分と抵触し無効であるとして、その執行を許さない旨の判決を求めて提訴した。
あてはめ
被上告人は、第一次仮処分の執行を受けたことにより、上告人の工事を妨害してはならない不作為義務を負担している。Dが上告人の依頼に基づき工事に従事していたのであれば、被上告人がDに対して第二次仮処分を執行し工事を中止させることは、実質的に上告人の工事を妨害する行為に他ならない。これは第一次仮処分によって生じた不作為義務に違反し、その効力を失わせるものである。したがって、正規の不服申立手続によらないかかる執行は、法的に許容されない。原審は、Dが上告人のために従事していたか否かの事実を確定せずに請求を棄却しており、審理不尽である。
結論
第一次仮処分の不作為義務に違反する第二次仮処分の執行は許されない。Dが上告人の依頼により工事に従事していたか否かを確定させるため、原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
仮処分の効力を潜脱する目的で、別個の保全処分を「武器」として利用すること(対抗仮処分)を制限する射程を持つ。答案上は、保全処分の競合や不服申立手続の適正さが問題となる場面で、既執行の仮処分の実効性を確保するための理屈として援用できる。
事件番号: 昭和39(オ)43 / 裁判年月日: 昭和39年11月20日 / 結論: その他
地上建物が自己の所有と主張し、かつ該土地に賃借権を有すると主張している場合は、土地の占有権をも主張しているものと解するのが相当である。