執行債務者の住所における動産仮差押の執行に際し、第三者が執行債権者に対して、自己の占有し、かつ、執行債権者もその所在を知つていなかつた動産を執行債務者の所有に属するものと主張し、執行債権者をその所在場所に案内のうえ任意に提供して仮差押手続をなすことを積極的に容認し、これによつて、執行債権者をして右物件が執行債務者の所有に属するものと誤信してこれに対する執行をするにいたらせるとともに、執行債務者の他の物件に対する執行が取り止めになつた等原判示の事情(原判決理由参照)があるときは、右第三者が執行債権者に対し執行排除の異議事由として仮差押物件の所有権を主張することは、信義則に照らし、許されないものと解するのが相当である。
第三者異議の訴の異議事由として所有権を主張することが信義則に照らして許されないとされた事例
民法1条,民訴法549条,民訴法748条
判旨
第三者が執行債権者に対し、目的物への差押えを積極的に容認する態度を示した場合、信義則上、当該第三者は自己の所有権を主張して第三者異議の訴を提起することはできない。
問題の所在(論点)
執行目的物の所有者が、執行債権者に対し、当該物への執行を積極的に容認する言動をとった後に、自己の所有権を異議事由として第三者異議の訴を提起することは信義則に反し許されないか。
規範
権利者が、相手方との関係において自ら権利を主張しない旨の表示をし、または相手方がその権利を侵害することを積極的に容認する言動をとった場合には、後に当該権利を主張して相手方の行為を覆すことは、信義則(民法1条2項)に照らし許されない。この理は、民事執行手続における第三者異議の訴(民事執行法38条)の異議事由の主張についても同様に適用される。
重要事実
債権者である被上告人は、債務者である訴外門上に対する有体動産仮差押命令に基づき、本件物件の仮差押手続を実施した。その際、本件物件の真の所有者であると主張する上告会社の代表者Dは、被上告人の代理人らに対し、個人としてではなく会社の代表者として、本件物件に対して仮差押手続をなすことを積極的に容認する表示行為を行った。その後、上告会社は本件物件の所有権を主張し、仮差押えの不当を訴えて第三者異議の訴を提起した。
あてはめ
上告会社の代表者Dは、被上告人に対し、本件物件への仮差押手続を積極的に容認する旨を表示している。このような言動は、被上告人に対し、上告会社が本件物件について所有権を主張しないであろうとの信頼を生じさせるものである。したがって、上告会社が後にこの信頼に反して所有権を主張し、第三者異議の訴の異議事由とすることは、信義則上許されない。なお、この判断は被上告人との相対的な関係においてのみ生じるものであり、上告会社が他の第三者との関係で所有権を主張することを妨げるものではない。
結論
上告会社は被上告人に対する関係において、本件物件の所有権を第三者異議の訴の異議事由として主張し得ない。上告棄却。
実務上の射程
第三者異議の訴における「信義則による遮断」を認めた重要判例である。答案上は、明文の要件(所有権の存在等)を満たす場合であっても、原告の従前の態度から「権利の濫用」や「信義則違反」が認められる場合には、訴えが排斥されることを論証する際に用いる。あくまで相対的な効果にとどまる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和39(オ)43 / 裁判年月日: 昭和39年11月20日 / 結論: その他
地上建物が自己の所有と主張し、かつ該土地に賃借権を有すると主張している場合は、土地の占有権をも主張しているものと解するのが相当である。