不動産を目的とする譲渡担保において,被担保債権の弁済期後に譲渡担保権者の債権者が目的不動産を差し押さえ,その旨の登記がされたときは,設定者は,差押登記後に債務の全額を弁済しても,第三者異議の訴えにより強制執行の不許を求めることはできない。
譲渡担保権者の債権者が被担保債権の弁済期後に目的不動産を差し押さえた場合において設定者が第三者異議の訴えにより強制執行の不許を求めることの可否
民法369条(譲渡担保),民事執行法38条1項
判旨
債権譲渡担保において、被担保債権が消滅した後に譲渡担保権者が目的債権を第三者に譲渡した場合であっても、債務者は譲受人に対して目的債権の消滅を対抗できるか。
問題の所在(論点)
被担保債権の弁済により債権が設定者に復帰した後に、譲渡担保権者が行った債権譲渡の効力(民法467条の対抗要件の問題か、それとも権利者の有無の問題か)。
規範
債権譲渡担保は、形式上は債権の移転を伴うが、実質的には被担保債権の回収を目的とする担保物権的性質を有する。したがって、被担保債権が弁済等により消滅した場合には、譲渡担保権は付随性を有することから消滅し、債権の帰属は当然に設定者に復帰する。この場合、設定者は、被担保債権の消滅による債権の復帰を、対抗要件の有無にかかわらず、譲受人等の第三者に対して対抗することができる。
重要事実
設定者は、譲渡担保権者(受託者)に対し、自己が有する第三者に対する売掛金債権を、特定の債務(被担保債権)の担保として譲渡した。その後、設定者は譲渡担保権者に対して被担保債権を全額弁済し、担保権は消滅した。しかし、譲渡担保権者は債権が復帰したにもかかわらず、これをさらに別の第三者に譲渡した。この再譲受人が、債務者(第三債務者)に対して支払を求めた事案である。
あてはめ
本件では、被担保債権の弁済により、譲渡担保権は目的を達して消滅している。譲渡担保の性質上、被担保債権が消滅すれば、債権の帰属は特段の意思表示を要さず設定者に当然に復帰すると解される。したがって、その後の譲渡担保権者による再譲渡は、無権利者による処分にほかならない。無権利者から債権を譲り受けたとしても、対抗要件の具備の有無を問わず、設定者は債権の帰属を主張できる(譲受人は権利を取得できない)といえる。
結論
被担保債権が消滅した後は、譲渡担保権者は無権利者となるため、債務者は、その後の譲受人からの請求に対し、債権が既に設定者に復帰したことを主張して拒絶することができる。
実務上の射程
判決文の文字化け等により詳細は一部不明であるが、譲渡担保の付随性および被担保債権消滅による権利の当然復帰を認める法理に即して判断したものである。
事件番号: 昭和57(オ)1408 / 裁判年月日: 昭和62年11月10日 / 結論: 棄却
一 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は右譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、右対…