第三者異議の訴えの原告の法人格が執行債務者に対する強制執行を回避するために濫用されている場合には,原告は,執行債務者と別個の法人格であることを主張して強制執行の不許を求めることは許されない。
第三者異議の訴えの原告についての法人格否認の法理の適用
民事執行法23条,民事執行法38条1項,民訴法115条,民法33条,商法52条
判旨
第三者異議の訴えにおいて、原告の法人格が執行債務者に対する強制執行を回避するために濫用されている場合には、法人格否認の法理の適用により、原告は別個の法人格であることを主張して強制執行の排除を求めることはできない。
問題の所在(論点)
第三者異議の訴えにおいて、債務名義の執行力の範囲(民訴法115条1項各号、民執法23条1項各号)に含まれない第三者が、執行債務者の法人格を濫用している場合に、法人格否認の法理を適用して当該第三者からの異議を排斥できるか。
規範
法人格否認の法理が適用される場合、当該会社は取引の相手方等に対し、別個の法人格であることを主張できない。もっとも、既判力や執行力の範囲を、判決に表示されていない会社にまで拡張することは許されない。一方、第三者異議の訴えは、執行債務者に対して適法に開始された強制執行に対し、原告が受忍すべき地位にないことを理由に排除を求めるものである。したがって、原告の法人格が執行債務者に対する強制執行を回避するために濫用されている場合には、法人格否認の法理を適用し、別個の法人格であることを理由とする強制執行の排除は許されない。
重要事実
ゴルフ場経営会社D(債務者)は、預託金返還請求訴訟の勝訴判決に基づく会員らの強制執行を予想し、これを妨害する目的で、役員構成がほぼ同一の関連会社間での信託契約や商号変更、及び上告人の設立等を行った。Dは上告人を道具として利用できる支配的地位にあり、上告人の法人格はDに対する強制執行を回避するために濫用されていた。上告人は、Dを債務者とする動産執行の目的物について、自己が所有又は占有するものであると主張して、第三者異議の訴えを提起した。
あてはめ
Dは会員らによる強制執行を免れるため、上告人を意のままに操り法人格を濫用していた。上告人は、形式的にはDとは別個の法人格であり、債務名義の執行力が及ぶ範囲には含まれない。しかし、本件訴えの本質は「強制執行による侵害を受忍すべき地位にないこと」の主張である。Dの債務免脱のために設立・利用されている上告人が、別個の法人格を盾に執行の不許を求めることは、法人格否認の法理により許されない。上告人は、本件物件の差し押さえを受忍すべき地位にあるといえる。
結論
上告人の法人格がDに対する強制執行を回避するために濫用されている以上、上告人はDと別個の法人格であることを主張して本件各強制執行の不許を求めることはできない。
実務上の射程
執行文付与手続による執行力の拡張(実体的な承継関係等の立証)が困難な場面であっても、第三者異議の訴えの被告(債権者)側から「抗弁」として法人格否認の法理を主張し、執行を維持できることを示した。法人格否認の法理は既判力・執行力の範囲を直接拡張するものではないが、異議訴訟という訴訟形態の中では実質的に同様の効果をもたらす。
事件番号: 昭和56(オ)583 / 裁判年月日: 昭和59年1月27日 / 結論: 破棄自判
広告用看板を建物本体の柱にボルト等で接合したうえ接合部分を壁面の一部としてモルタル吹付を施してはめこみ式に密着して取り付けた等の判示の事実関係のもとにおいては、右看板の所有者が建物の壁面を占有しているとはいえない。