広告用看板を建物本体の柱にボルト等で接合したうえ接合部分を壁面の一部としてモルタル吹付を施してはめこみ式に密着して取り付けた等の判示の事実関係のもとにおいては、右看板の所有者が建物の壁面を占有しているとはいえない。
建物の壁面に取り付けられた広告用看板の所有者が壁面を占有していないとされた事例
民法180条
判旨
不動産の明渡執行において、目的不動産上に存する動産に利害関係を有するに過ぎない者は、不動産自体の譲渡・引渡を妨げる権利がない限り、第三者異議の訴えにより執行を排除できない。また、建物の壁面に広告用工作物を付着させているだけでは、その建物部分に対する客観的外部的な事実支配があるとは認められず、占有は成立しない。
問題の所在(論点)
1. 不動産上の動産について権利を有するに過ぎない者が、当該不動産の明渡執行に対し、第三者異議の訴えを提起できるか。 2. 建物の外壁に広告用看板を設置・所有している場合に、当該建物部分に対する占有が認められるか。
規範
1. 不動産引渡しの強制執行に対する第三者異議の訴え(民事執行法38条1項)において、執行を排除し得るのは、執行の目的物である不動産について所有権その他その譲渡若しくは引渡を妨げる権利を主張し得る者に限られる。目的不動産上に存する動産について利害関係を有するのみでは足りない。 2. 不動産の非独立的な構成部分(壁等)について占有(民法180条)が認められるためには、その部分が特定されているだけでなく、その部分につき客観的外部的な事実支配があることを要する。
重要事実
上告人(賃貸人)は、土地賃借人Dとの借地契約を解除し、建物収去土地明渡請求訴訟で勝訴確定判決を得た。被上告人は、Dの承諾を得て本件建物の一部分(G部分)に広告用ネオン看板を設置し、その壁面に看板をボルト等で接合・固定していた。上告人が建物明渡等の強制執行に着手した際、被上告人は、看板(動産)の所有権、および看板付着部分の占有権を根拠として、執行の排除を求める第三者異議の訴えを提起した。
あてはめ
1. 本件広告用工作物は建物本体に接合されており、不動産明渡執行における「執行の目的物でない動産」の処理の問題に過ぎない。被上告人は看板自体の所有権を有していても、執行目的物である建物や土地自体の譲渡・引渡を妨げる権利(借地権等)を有していない。したがって、強制執行を排除し得る「権利」を有しない。 2. 被上告人は看板を壁面に密着させて所有しているが、これは看板を通じた広告活動に過ぎない。建物の一部である壁面や支柱に対し、他人の支配を排して自己の支配下に置くような客観的外部的な事実支配を及ぼしているとはいえないため、占有権は認められない。
結論
被上告人の請求は棄却される。不動産の引渡を妨げる権利を有せず、かつ建物部分の占有も認められない以上、第三者異議の訴えにより執行を排除することはできない。
実務上の射程
明渡執行を阻止するための「占有」や「権利」の範囲を厳格に画した。単なる動産の設置や広告利用のみでは、執行を拒絶し得る適法な占有には当たらない。建物収去や明渡を求める実務において、目的物の一部を物理的に利用しているだけの第三者による異議を封じる際に極めて有用な規範である。
事件番号: 昭和46(オ)1076 / 裁判年月日: 昭和47年3月24日 / 結論: 棄却
建物を占有する者は、他人に対する債務名義に基づく建物収去土地明渡の強制執行に対しては、占有の侵害を受忍すべき理由のないかぎり、対抗しうる本権の有無を問わず、占有権に基づき第三者異議の訴を提起し執行の不許を求めることができる。