右の場合には、民法第三四五条の法意に徴し、質権は有効に成立しない。
占有改定の方法による質物の引渡と質権の成否。
民法342条,民法345条
判旨
動産質権の有効な成立には目的物の引渡を要するが、質権設定者に引き続き占有を継続させる占有改定による引渡では、民法345条の趣旨に照らし質権は成立しない。また、占有改定による占有の取得では、民法192条による即時取得の保護を受けることもできない。
問題の所在(論点)
1.占有改定による引渡によって動産質権(民法344条)が有効に成立するか。 2.占有改定による占有の取得が、即時取得(民法192条)の要件である「占有を始めた」に該当するか。
規範
1.動産質権の成立要件としての「引渡」(民法344条)に占有改定は含まれない。民法345条が質権者に質権設定者のために占有をさせることを禁じている法意に照らせば、占有改定による引渡では質権は有効に成立しない。 2.民法192条にいう「占有を始めた」とは、一般に外観上の占有状態の変化を伴うべきであり、占有改定による占有の取得はこれに含まれない。
重要事実
被上告人は、代物弁済等により本件物件を取得し、引渡を受けていた。一方で、上告人は、訴外F石油から本件物件につき質権の設定を受けたが、その際の引渡は「占有改定」の方法によるものであった。上告人は、質権が有効に成立していること、または即時取得(民法192条)により質権を取得したことを主張して、所有者である被上告人に対抗した。
あてはめ
1.上告人は、質権設定に際し占有改定による引渡しか受けていない。民法345条は、質権者が設定者に自己に代わって占有をさせることを禁じており、占有改定による質権の設定を認めない趣旨である。したがって、本件では質権自体がいまだ有効に成立していない。 2.即時取得についても、上告人が得た占有は占有改定にすぎない。判例上の確立した見解によれば、占有改定は「占有を始めた」に当たらないため、上告人に即時取得の保護を与えることはできない。
結論
占有改定による質権設定は、民法345条により認められず、質権は成立しない。また、占有改定による即時取得も認められないため、上告人は本件物件につき質権を主張できない。
実務上の射程
動産質権の成否および即時取得の可否という、動産物権変動の重要論点に関するリーディングケースである。答案上は、質権については344条・345条をセットで引用し、即時取得については192条の「占有を始めた」の解釈として占有改定を否定する文脈で使用する。
事件番号: 昭和46(オ)1050 / 裁判年月日: 昭和47年3月24日 / 結論: 棄却
仮登記権利者は、本登記に必要な要件を具備した場合でも、本登記を経由しないかぎり、自己の所有権を主張して第三者異議の訴を提起することは許されない。