売主がb港において売買の目的物たる木材を引き渡すべき義務を負担する種類売買においては、木材が積出港たるa港の土場に集積されたからといつて、売買の目的物が右木材に特定されたものということはできない。
第三地において引き渡すべき義務を定めた木材の種類売買と目的物たる木材の特定
民法401条2項
判旨
売買の目的物が種類物である場合、引渡場所が指定されているときは、単に積出港に商品が集積されたり、買主側の代理人が受入明細書を交付したり、商品に買主のマークが記されたりしただけでは、目的物の特定(民法401条2項)は認められず、所有権は移転しない。
問題の所在(論点)
引渡場所が指定されている種類物の売買において、積出港への集積や買主マークの表示、受入明細書の交付等があった段階で、目的物の「特定」が認められ、所有権が移転するか。
規範
種類債権において目的物が特定し、所有権が買主に移転するためには、債務者が「物の給付をするのに必要な行為を完了」することを要する(民法401条2項前段)。持参債務等の引渡場所が指定されている契約においては、原則として指定された場所において現実に引渡しの準備を終え、通知等を行う必要がある。
重要事実
被上告人(売主)と訴外D社(買主)との間の木材売買において、引渡場所は「b港」と合意されていた。実際には、積出港である「a港」の土場に木材が集積され、D社の代理人Eが受入明細書を被上告人に渡し、木材の一部にD社のマークがすり込まれていた。その後、上告人が当該木材を仮差押えしたため、被上告人が所有権を主張して第三者異議の訴えを提起した。
あてはめ
本件売買は「b港」を引渡場所とする種類売買であり、売主は同所での引渡義務を負っていた。a港(積出港)への集積は引渡準備の過程に過ぎず、また買主代理人による受入明細書の交付や木材へのマークの付与も、約定の引渡場所における給付に必要な行為の完了を意味しない。したがって、いまだ目的物は特定されておらず、所有権は依然として売主である被上告人に留保されている。
結論
目的物の特定は認められず、所有権は移転していない。したがって、被上告人は上告人による仮差押えに対し、当該木材の所有権を主張することができる。
実務上の射程
特定(民法401条2項)の要件である「必要な行為を完了」の解釈を示す。特に、引渡場所が合意されている場合には、その場所での提供が基準となることを強調する。答案では、契約類型(持参・取立・送付)を特定した上で、事実関係が「完了」といえる段階に達しているかを判別する際の指標として用いる。
事件番号: 昭和57(オ)1408 / 裁判年月日: 昭和62年11月10日 / 結論: 棄却
一 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は右譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、右対…
事件番号: 昭和43(オ)1250 / 裁判年月日: 昭和44年3月28日 / 結論: 棄却
宅地に対する抵当権の効力は、特段の事情のないかぎり、抵当権設定当時右宅地の従物であつた石燈籠および庭石にも及び、抵当権の設定登記による対抗力は、右従物についても生ずる。
事件番号: 昭和38(オ)146 / 裁判年月日: 昭和39年1月24日 / 結論: 棄却
金銭の直接占有者は、特段の事情のないかぎり、その占有を正当づける権利を有するか否かにかかわりなく、金銭の所有者とみるべきである。