判旨
動産執行における差押調書上の物件表示に誤記があっても、執行の対象となった目的物の同一性が認められる限り、当該差押えおよびその後の競売の効力は妨げられない。
問題の所在(論点)
差押調書および競売調書における目的物の表示が実際の物件と異なる誤記(電気ドリルと電気グラインダーの取り違え等)がある場合に、当該執行手続の効力が有効に生じ、目的物の同一性を維持できるか。
規範
動産執行における目的物の特定は、差押調書の記載に基づいて判断されるべきであるが、記載上の名称や数量に誤りがある場合であっても、実質的に同一の物件を指していることが客観的に認められるならば、その執行手続の効力は維持される。
重要事実
執行吏Gは、債務者E所有の動産につき「電気ドリル1個」として差し押さえ、これを訴外Hに競売した(その後被上告人が取得)。しかし、実際には当該物件は「電気グラインダー」であった。その後、執行吏Dが上告人の委任に基づき、同一の物件を「電気グラインダー4個(部品単位の数、完成品としては2個)」として再度差し押さえたため、先行する競売手続で取得した被上告人と、後続の差押えを行った上告人との間で物件の帰属が争われた。
あてはめ
先行の差押調書に「電気ドリル1個」と記載され、競売調書にも同様に記載されていたとしても、それが実際には「電気グラインダー」の誤記であったことが証拠上明らかである。また、後続の差押えにおける「電気グラインダー4個」との表示も、部品単位の個数か完成品の個数かの違いにすぎず、先行の執行対象物件と同一物であると認められる。したがって、名称や個数の表示に相違があっても、物件の同一性が認められる以上、先行の競売による所有権移転の効力は当該物件に及んでいると評価される。
結論
先行する執行手続の効力は有効であり、物件の同一性が認められるため、被上告人が競売により取得した物件に対してなされた後続の差押えは不当である。
実務上の射程
動産執行における「目的物の特定」の限界を示す。調書上の些細な記載ミスがあっても、実体的な同一性が立証可能であれば手続は有効とされる。答案上は、執行の適法性や目的物の帰属が争点となる場面で、外観上の表示よりも実体的同一性を重視する論理として活用できる。
事件番号: 昭和57(オ)1408 / 裁判年月日: 昭和62年11月10日 / 結論: 棄却
一 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は右譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、右対…
事件番号: 昭和34(オ)99 / 裁判年月日: 昭和40年3月26日 / 結論: 棄却
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