被告は通謀虚偽表示の抗弁を提出しつつ右抗弁について、一、二審を通じて全く立証をなさなかつたところ、原審は、原告の立証の内の原判決挙示の証拠をもつて被告の抗弁事実を認定しているが、原審の事実認定を、原判決挙示の証拠に照らしてみると、論旨指摘の諸点について合理的な疑が存するから、その挙示する証拠の程度をもつて、原告の本件離婚は実体を伴わず、本件財産分与は通謀虚偽の意思表示であると断定し、被告の抗弁を是認する原判決は審理不尽、理由不備の違法がある。
離婚、財産分与が通謀虚偽であるとの事実認定が審理不尽、理由不備とされた事例
民法94条,民訴法185条
判旨
離婚に伴う財産分与が通謀虚偽表示として無効であると認定するためには、離婚の実体の有無や差押え免脱の意図に加え、相手方が強制執行をなし得る債権を有しているか等の事情を総合し、合理的な疑いを差し挟まない程度の審理を要する。
問題の所在(論点)
離婚に伴う財産分与が通謀虚偽表示(民法94条1項)に該当すると認定するために必要な審理の程度、および債権者の債権の存否が認定に与える影響が問題となる。
規範
離婚に伴う財産分与について民法94条1項の通謀虚偽表示の成立を認めるためには、単に形式的な離婚であるとの疑いがあるだけでなく、第三者による強制執行を免れる目的の有無、及び当該第三者が実際に強制執行をなし得る有効な債権を有しているか否か等の諸点について、合理的な疑念を排するに足りる証拠に基づき、慎重に判断されなければならない。
重要事実
上告人と訴外Dは離婚し、本件物件を含む財産分与契約を締結した。被上告人は、この離婚および財産分与が、差押えを免れるために通謀してなされた虚偽のものであると主張(通謀虚偽表示の抗弁)。原審は、被上告人が自ら立証活動を全く行わなかったにもかかわらず、上告人側の提出した証拠のみから抗弁事実を認定し、本件財産分与を無効とした。これに対し、上告人が事実認定の不当を訴えて上告した事案である。
あてはめ
原審は上告人の提出証拠のみから通謀虚偽表示を断定したが、記録によれば離婚に実体がないと断定するには合理的な疑いが残る。特に、被上告人がDに対して本件債務名義に基づき実際に強制執行をなし得る債権を有しているか否かは、差押え免脱目的の有無を判断する上で不可欠な要素であるにもかかわらず、原審はこの点について十分な審理を尽くしていない。このような状況下で通謀虚偽表示を是認した原判決には、審理不尽・理由不備の違法があるといえる。
結論
原判決を破棄し、離婚の実体や債権の存否等についてさらに審理を尽くさせるため、本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
財産分与が通謀虚偽表示として争われる場面では、離婚の成否だけでなく、背後にある債権者の債権の有効性まで含めた主張立証が重要となる。本判決は、事実認定における合理的な疑いの排除を求めており、答案上は、債権者代位権や詐害行為取消権が構成しにくい場面での「94条1項の抗弁」の立証ハードルを論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和44(オ)447 / 裁判年月日: 昭和49年9月30日 / 結論: 破棄差戻
将来の事実の発生を条件として強制執行の不許を求める第三者異議の訴は、これを許容すべき特別な事情の存する場合を除き、許されない。