第三者が民法第九四条第二項の保護を受けるためには、自己が善意であつたことを主張、立証しなければならない。
民法第九四条第二項の「善意」の主張および立証責任。
民法94条2項
判旨
民法94条2項の「第三者」として保護を受けるためには、自己が善意であったことを主張・立証する必要がある。また、債務者が強制執行を認諾していない限り、債権者は債務者に代位して当該強制執行の不許を求めることができる。
問題の所在(論点)
1. 民法94条2項の「第三者」における善意の主張・立証責任はどちらが負うか。 2. 差押えの解放を条件とする調停の存在が、代位による強制執行不許の訴えを妨げるか(債務者の執行認諾の有無)。
規範
民法94条2項の規定により保護を受ける第三者は、自己が善意であったことについて主張・立証責任を負う。また、強制執行の対象となった物件に関し、債務者が単に一定の条件(弁済等)により執行を解放する旨を約したにとどまる場合は、強制執行そのものを認諾したとはいえず、代位権行使は妨げられない。
重要事実
債務者Dが債権者Eに対して負う35万円の債務につき、上告人がEに代わって債権者となり、債権額を50万円とした。Dが上告人に対し右債務を完済することを条件として、上告人が本件物件に対して行っていた差押えを解放する旨の調停が成立した。その後、被上告人がDに代位して本件強制執行の不許を求めて提訴した。これに対し上告人は、Dが強制執行を認諾していること、および自らが民法94条2項の第三者として保護されるべきことを主張した。
あてはめ
1. 立証責任について、判例(最判昭32.1.19)を引用し、保護を求める第三者側が自らの善意を証明すべきであるとした。本件において上告人はこの立証を欠いている。 2. 執行認諾の有無について、本件調停の内容は「Dが弁済した時に上告人が差押えを解放する」という約束にすぎない。これはDが強制執行そのものを容認(認諾)したことを意味しない。したがって、被上告人がDに代位して強制執行の不許を求めることは、信義則上も実体法上も許容される。
結論
民法94条2項の善意の立証責任は第三者が負う。また、本件調停は執行認諾にあたらないため、被上告人による代位行使は認められる。
実務上の射程
虚偽表示の第三者の善意に関する立証責任を明確にした重要判例である。司法試験においては、94条2項の要件検討において「善意」の認定を行う際、主張・立証責任が第三者側にあることを前提に論述を組み立てる根拠となる。また、債権者代位権行使の可否において、債務者の行為が執行認諾に該当するか否かの判断基準としても機能する。
事件番号: 昭和44(オ)246 / 裁判年月日: 昭和44年11月14日 / 結論: 破棄差戻
被告は通謀虚偽表示の抗弁を提出しつつ右抗弁について、一、二審を通じて全く立証をなさなかつたところ、原審は、原告の立証の内の原判決挙示の証拠をもつて被告の抗弁事実を認定しているが、原審の事実認定を、原判決挙示の証拠に照らしてみると、論旨指摘の諸点について合理的な疑が存するから、その挙示する証拠の程度をもつて、原告の本件離…