振込依頼人から受取人の銀行の普通預金口座に振込みがあったときは、両者の間に振込みの原因となる法律関係が存在するか否かにかかわらず、受取人と銀行との間に振込金額相当の普通預金契約が成立する。
振込依頼人と受取人との間に振込みの原因となる法律関係が存在しない場合における振込みに係る普通預金契約の成否
民法91条,民法666条
判旨
誤振込みであっても、振込依頼人と受取人の間の原因関係の有無にかかわらず、受取人と銀行との間には振込金額相当の預金契約が成立し、受取人は預金債権を取得する。
問題の所在(論点)
振込依頼人と受取人との間に原因関係が存在しない「誤振込み」の場合、受取人に預金債権が成立するか。また、振込依頼人は受取人の債権者による差押えを排除し得るか(第三者異議の訴えの成否)。
規範
振込依頼人と受取人との間に振込みの原因となる法律関係が存在するか否かにかかわらず、受取人と銀行との間には振込金額相当の普通預金契約が成立し、受取人が銀行に対して同額の普通預金債権を取得する。なぜなら、①預金規定上、原因関係の成否を預金成立の要件とする定めがないのが通常であり、②振込システムは、銀行が各資金移動の原因関係に関知することなく、安全・安価・迅速に処理する仕組みを採っているからである。
重要事実
振込依頼人(被上告人)は、賃料等の支払のために銀行で振込依頼をしたが、誤って過去に取引のあった無関係な第三者(D)の口座を振込先に指定し、入金記帳がなされた。Dの債権者(上告人)は、この誤振込みによって生じたDの普通預金債権を差し押さえた。これに対し、振込依頼人は実質的な資金の帰属が自分にあると主張し、第三者異議の訴えを提起した。
あてはめ
本件では、振込依頼人とDとの間に本件振込みの原因となる法律関係は何ら存在しない。しかし、振込手続に従い入金記帳がなされた以上、前述の規範に照らし、Dは銀行に対する普通預金債権を有効に取得する。この場合、振込依頼人はDに対し、同額の不当利得返還請求権を取得し得るにとどまり、預金債権そのものの譲渡を妨げるような権利(実質的帰属等)を有するものではない。
結論
受取人に預金債権が成立するため、当該債権に対する強制執行は有効である。したがって、振込依頼人による第三者異議の請求は棄却される。
実務上の射程
預金債権の成立については、原因関係の存否を切り離す強い抽象性を認めた判例である。答案上は、誤振込みされた預金の法的性質や、不当利得返還請求の可否(成立を前提とした上で返還を認める)、銀行による相殺の可否(原則有効だが信義則による制限があり得る点に注意)を論じる際の出発点として用いる。
事件番号: 昭和43(オ)294 / 裁判年月日: 昭和43年11月15日 / 結論: 破棄差戻
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