刑訴法430条の準抗告裁判所は、捜査機関の処分の当否を判断するに当たり、捜査機関が当該処分当時に収集していた資料のみならず、その当時の事実に関する資料であって、その後に捜査機関が収集し、又は裁判所に提出されたものについても考慮に入れるべきである。
刑訴法430条の準抗告裁判所が捜査機関の処分の当否を判断するに当たり考慮すべき資料
刑訴法124条1項、刑訴法222条1項、刑訴法426条、刑訴法430条、刑訴法432条
判旨
刑事訴訟法430条の準抗告裁判所は、捜査機関の処分の当否を判断するにあたり、処分当時の資料のみならず、その後に収集された資料等も考慮すべきである。また、違法な還付及び再領置の手続を経た場合であっても、元の差押えの効力が持続している限り、被疑者は「押収を受けた者」として還付請求権を有する。
問題の所在(論点)
1. 準抗告裁判所が捜査機関の処分の当否を判断する際、処分後の資料を考慮できるか。2. 違法な還付・再領置がなされた場合、元の被差押え人は刑事訴訟法123条1項の「押収を受けた者」としての地位を維持するか。
規範
1. 刑事訴訟法430条の準抗告裁判所は、捜査機関の処分の当否を判断する際、処分当時に収集されていた資料のみならず、その後の捜査や裁判所に提出された当時の事実に関する資料も考慮すべきである。2. 違法な還付処分を経て再領置された物件であっても、先行する差押えの効果が失われていない場合には、差押処分を受けた者は依然として還付請求の主体となり得る。
重要事実
司法警察員は、窃盗被疑事件の捜索で申立人から本件スーツケース(現金1500万円在中)を差し押さえた。同日、警察は被害者とされるAに本件現金を還付し、直後にAから任意提出を受けて領置した。その後、申立人は窃盗ではなく詐欺罪で起訴されたが無罪が確定。申立人は現金の還付を求めたが、検察官は「現金の占有はAの任意提出に基づくものであり、申立人は押収を受けた者に当たらない」として還付を拒否した。
事件番号: 平成4(し)64 / 裁判年月日: 平成4年10月13日 / 結論: 棄却
差押処分が違法として取り消されたため、司法警察員が当該差押物を返還する行為は、刑訴法四三〇条二項の押収物の還付に関する処分には当たらず、これに対する準抗告の申立ては、不適法である。
あてはめ
1. 原決定は処分当時の資料のみで還付の合理性を判断したが、無罪判決の記録等によれば本件現金が贓物(被害品)であると断定できず、後の資料を考慮すれば還付処分は違法である。2. この違法な還付処分により、本来なされるべきであった申立人への還付が妨げられたに過ぎず、当初の差押えの効果は失われていない。したがって、申立人は「押収処分を受けた者」に該当する。3. 検察官は申立人が権利者でないことを前提に還付を拒否したが、申立人以外の者に還付すべき特段の事情があるか否かを再検討すべきである。
結論
警察によるAへの還付処分、および検察官による申立人への還付拒否処分をいずれも取り消す。
実務上の射程
準抗告の事後審査において「処分時」の事情に限定せず、真実の権利関係を反映させる柔軟な判断枠組みを示した。また、捜査機関が「還付→即再領置」という手法で被差押え人の還付請求権を免脱することを封じる射程を持つ。
事件番号: 令和4(し)25 / 裁判年月日: 令和4年7月27日 / 結論: 棄却
捜査機関が押収した各押収物には、被押収者らに対する各準強制性交等被疑事件等に関する動画データ等が記録されており、同動画データ等は、被害者とされた女性らに無断で撮影又は録音されたもので、これらが流布された場合には、同人らの名誉、人格等を著しく害し、同人らに多大な精神的苦痛を与えるなどの回復し難い不利益を生じさせる危険性が…
事件番号: 昭和45(し)18 / 裁判年月日: 昭和45年9月17日 / 結論: 棄却
司法警察員がした差押処分等の取消を求める準抗告棄却決定に対する特別抗告が最高裁判所に係属中に当該差押物件が準抗告申立人に還付された場合には、差押処分等の取消を求める法律上の利益を欠くに帰したものであり、特別抗告が、この法律上の利益があることを前提とするときは、前提を欠くものとして棄却を免れない(最高裁判所昭和四二年(し…
事件番号: 平成15(し)42 / 裁判年月日: 平成15年6月30日 / 結論: その他
1 捜査機関による押収処分を受けた者は,刑訴法222条1項において準用する123条1項にいう「留置の必要がない」場合に当たることを理由として,当該捜査機関に対して押収物の還付を請求することができる。 2 捜査機関による押収処分を受けた者から,還付請求を却下した処分の取消しと自己への還付を求めて刑訴法430条2項の準抗告…
事件番号: 昭和43(し)91 / 裁判年月日: 昭和44年8月27日 / 結論: 棄却
司法警察員が押収物を被害者に還付した後、当該押収物が他に売却、搬出され、被害者方に存在しなくなつた場合には、当該被害者還付処分の取消を求める準抗告は、実益を欠き、不適法である。