司法警察員がした差押処分等の取消を求める準抗告棄却決定に対する特別抗告が最高裁判所に係属中に当該差押物件が準抗告申立人に還付された場合には、差押処分等の取消を求める法律上の利益を欠くに帰したものであり、特別抗告が、この法律上の利益があることを前提とするときは、前提を欠くものとして棄却を免れない(最高裁判所昭和四二年(し)第五六号同四三年二月二九日第一小法廷決定・裁判集刑事一六六号三〇五頁参照)。
司法警察員がした差押処分等の取消を求める準抗告棄却決定に対する特別抗告が最高裁判所に係属中に当該差押物件が準抗告申立人に還付された場合と差押処分等の取消を求める利益の存否
刑訴法124条,刑訴法222条1項,刑訴法430条,刑訴法433条
判旨
差押処分を受けた物件が還付された場合、当該処分の取消しを求める準抗告の申立ては、取消しを求める法律上の利益を欠き、不適法となる。
問題の所在(論点)
差押物件の還付がなされた後において、なお当該差押処分の取消しを求める準抗告(刑訴法430条1項)の申立利益(法律上の利益)が認められるか。
規範
準抗告等の不服申立ては、不服を申し立てる対象となる処分が効力を維持しており、その取消しによって回復すべき「法律上の利益」が存することを前提とする。対象物件が還付され、処分の拘束から解放された場合には、特段の事情がない限り、処分の取消しを求める訴えの利益は消滅する。
重要事実
申立人は、司法警察員が昭和44年11月9日および10日に実施した物件の差押処分等に対し、その取消しを求めて準抗告を申し立てた。しかし、特別抗告の申立て後、本件物件は申立人に対して還付された。
事件番号: 平成4(し)64 / 裁判年月日: 平成4年10月13日 / 結論: 棄却
差押処分が違法として取り消されたため、司法警察員が当該差押物を返還する行為は、刑訴法四三〇条二項の押収物の還付に関する処分には当たらず、これに対する準抗告の申立ては、不適法である。
あてはめ
申立人が取消しを求めている物件は、特別抗告の審理中に既に還付されている。差押えの目的は証拠物の確保や没収の保全にあるが、還付によって申立人は物件の占有を回復しており、差押処分による制約は実質的に解消されている。したがって、現時点で当該処分の取消しを判断したとしても、申立人の権利関係に具体的な法的影響を及ぼす余地はなく、法律上の利益は失われたものと解される。
結論
本件準抗告の申立ては法律上の利益を欠くに至ったため、不適法として棄却を免れない。
実務上の射程
捜査機関による違法な処分に対する不服申立てにおいて、処分が終了・解消した場合の「訴えの利益」の有無に関する基本判例である。違法確認の利益が別途認められる特段の事情がない限り、現況が回復されれば不服申立ては門前払いとなる。答案上は、捜査手続の事後的救済の限界を論ずる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和43(し)91 / 裁判年月日: 昭和44年8月27日 / 結論: 棄却
司法警察員が押収物を被害者に還付した後、当該押収物が他に売却、搬出され、被害者方に存在しなくなつた場合には、当該被害者還付処分の取消を求める準抗告は、実益を欠き、不適法である。
事件番号: 令和7(し)177 / 裁判年月日: 令和7年11月10日 / 結論: その他
刑訴法430条の準抗告裁判所は、捜査機関の処分の当否を判断するに当たり、捜査機関が当該処分当時に収集していた資料のみならず、その当時の事実に関する資料であって、その後に捜査機関が収集し、又は裁判所に提出されたものについても考慮に入れるべきである。
事件番号: 平成1(し)76 / 裁判年月日: 平成元年10月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】押収物の還付が既になされた場合、当該押収処分の取消しを求める準抗告は申立ての利益を欠き、裁判をする実益がないものとして棄却される。 第1 事案の概要:司法警察員は、被告発人(申立人代表者)から物件の任意提出を受けて押収し、また捜索差押許可状に基づき物件を押収した。申立人はこれらの押収処分の取消しを…
事件番号: 平成15(し)42 / 裁判年月日: 平成15年6月30日 / 結論: その他
1 捜査機関による押収処分を受けた者は,刑訴法222条1項において準用する123条1項にいう「留置の必要がない」場合に当たることを理由として,当該捜査機関に対して押収物の還付を請求することができる。 2 捜査機関による押収処分を受けた者から,還付請求を却下した処分の取消しと自己への還付を求めて刑訴法430条2項の準抗告…