差押処分が違法として取り消されたため、司法警察員が当該差押物を返還する行為は、刑訴法四三〇条二項の押収物の還付に関する処分には当たらず、これに対する準抗告の申立ては、不適法である。
差押処分が取り消されたため司法警察員が当該差押物を返還する行為に対する準抗告申立ての適否
刑訴法123条1項,刑訴法222条1項,刑訴法430条1項,刑訴法430条2項
判旨
差押処分が違法として取り消された後に司法警察員が行う物件の返還行為は、押収の効果が消滅した後の占有移転にすぎず、刑訴法430条2項の「押収物の還付に関する処分」には当たらない。
問題の所在(論点)
差押処分の取消しに基づき、司法警察員が差押物を返還する行為が、刑訴法430条2項に基づく準抗告の対象となる「押収物の還付に関する処分」に含まれるか。
規範
刑訴法123条1項(222条1項で準用)にいう「還付」とは、押収物について留置の必要がなくなった場合に押収を解いて原状を回復する処分を指す。これに対し、差押処分の取消しによって既に押収の効力が消滅している場合において、その占有を移転する行為は、法的な「還付処分」には該当しない。
重要事実
司法警察職員が行った差押処分が違法として取り消された。これを受けて、司法警察員は当該差押物を被差押人に返還した。これに対し、当該物件の所有者が、右返還行為は刑訴法430条2項にいう「押収物の還付に関する処分」にあたるとして準抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和43(し)91 / 裁判年月日: 昭和44年8月27日 / 結論: 棄却
司法警察員が押収物を被害者に還付した後、当該押収物が他に売却、搬出され、被害者方に存在しなくなつた場合には、当該被害者還付処分の取消を求める準抗告は、実益を欠き、不適法である。
あてはめ
本件における司法警察員の返還行為は、差押処分が取り消されたことにより、既に押収の効力が消滅した後の事実的な占有移転にすぎない。刑訴法上の「還付」は、留置の必要性を判断して押収を解除する法的処分を指すが、本件では取消しにより当然に押収状態が解消されている。したがって、当該返還行為は刑訴法430条2項の準抗告の対象となる処分とはいえない。
結論
本件返還行為は「押収物の還付に関する処分」に当たらないため、これに対する準抗告の申立ては不適法である。
実務上の射程
捜査機関の処分に対する不服申立て(準抗告)の対象性を画定する射程を持つ。差押えが取り消された後の事実上の返還行為は、法的処分としての性質を欠くため、刑訴法430条2項による争い方はできないことを示している。答案上は、準抗告の適法性が問われる場面で「処分」の該当性を否定する論拠として活用する。
事件番号: 平成15(し)42 / 裁判年月日: 平成15年6月30日 / 結論: その他
1 捜査機関による押収処分を受けた者は,刑訴法222条1項において準用する123条1項にいう「留置の必要がない」場合に当たることを理由として,当該捜査機関に対して押収物の還付を請求することができる。 2 捜査機関による押収処分を受けた者から,還付請求を却下した処分の取消しと自己への還付を求めて刑訴法430条2項の準抗告…
事件番号: 令和7(し)177 / 裁判年月日: 令和7年11月10日 / 結論: その他
刑訴法430条の準抗告裁判所は、捜査機関の処分の当否を判断するに当たり、捜査機関が当該処分当時に収集していた資料のみならず、その当時の事実に関する資料であって、その後に捜査機関が収集し、又は裁判所に提出されたものについても考慮に入れるべきである。
事件番号: 昭和45(し)18 / 裁判年月日: 昭和45年9月17日 / 結論: 棄却
司法警察員がした差押処分等の取消を求める準抗告棄却決定に対する特別抗告が最高裁判所に係属中に当該差押物件が準抗告申立人に還付された場合には、差押処分等の取消を求める法律上の利益を欠くに帰したものであり、特別抗告が、この法律上の利益があることを前提とするときは、前提を欠くものとして棄却を免れない(最高裁判所昭和四二年(し…
事件番号: 昭和44(し)70 / 裁判年月日: 昭和44年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の特別抗告(刑訴法433条)において、違憲主張が実質的な法令違反にすぎない場合や、判例違反の具体的摘示がない場合は、正当な抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対し最高裁判所へ特別抗告を申し立てた。抗告の趣旨において憲法違反を主張したが、その内容は実質的に単なる法令違反…