判旨
刑法上の特別抗告(刑訴法433条)において、違憲主張が実質的な法令違反にすぎない場合や、判例違反の具体的摘示がない場合は、正当な抗告理由にあたらない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法433条に基づく特別抗告において、実質的に単なる法令違反をいう違憲主張や、判例を特定しない判例違反の主張が、正当な抗告理由として認められるか。
規範
刑事訴訟法433条1項に基づく最高裁判所への特別抗告が適法とされるためには、憲法違反または最高裁判所の判例(判例がない場合は大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例)と相反する判断をしたことを具体的かつ正当な理由とともに主張しなければならない。
重要事実
抗告人は、原決定に対し最高裁判所へ特別抗告を申し立てた。抗告の趣旨において憲法違反を主張したが、その内容は実質的に単なる法令違反を指摘するものにすぎなかった。また、判例違反を主張したが、対象となる判例を具体的に摘示していなかった。
あてはめ
本件抗告における違憲の主張は、憲法適合性の真摯な争いではなく、実質的には下位規範の解釈誤り等の法令違反を主張するものと認められる。また、判例違反の主張についても、どの判例にどのように違反するかの具体的摘示を欠いている。これらはいずれも、同法が限定的に認める抗告理由の形式を備えておらず、不適法な主張といえる。
結論
本件抗告を棄却する。抗告人の主張はいずれも刑訴法433条の抗告理由にあたらない。
実務上の射程
特別抗告の要件を厳格に解する実務運用を確認するものである。実務上、特別抗告を申し立てる際は、単なる法令違反を憲法違反に強引に読み替えるのではなく、具体的な憲法条項への抵触や、相反する具体的な判例の特定が不可欠であることを示唆している。
事件番号: 令和4(し)25 / 裁判年月日: 令和4年7月27日 / 結論: 棄却
捜査機関が押収した各押収物には、被押収者らに対する各準強制性交等被疑事件等に関する動画データ等が記録されており、同動画データ等は、被害者とされた女性らに無断で撮影又は録音されたもので、これらが流布された場合には、同人らの名誉、人格等を著しく害し、同人らに多大な精神的苦痛を与えるなどの回復し難い不利益を生じさせる危険性が…
事件番号: 昭和43(し)91 / 裁判年月日: 昭和44年8月27日 / 結論: 棄却
司法警察員が押収物を被害者に還付した後、当該押収物が他に売却、搬出され、被害者方に存在しなくなつた場合には、当該被害者還付処分の取消を求める準抗告は、実益を欠き、不適法である。
事件番号: 平成4(し)64 / 裁判年月日: 平成4年10月13日 / 結論: 棄却
差押処分が違法として取り消されたため、司法警察員が当該差押物を返還する行為は、刑訴法四三〇条二項の押収物の還付に関する処分には当たらず、これに対する準抗告の申立ては、不適法である。
事件番号: 昭和52(し)114 / 裁判年月日: 昭和54年12月12日 / 結論: 棄却
押収物が検察官の歳入編入処分により国の一般財産と混和し特定性を失つたときは、当該押収物の還付は不能である。
事件番号: 令和7(し)177 / 裁判年月日: 令和7年11月10日 / 結論: その他
刑訴法430条の準抗告裁判所は、捜査機関の処分の当否を判断するに当たり、捜査機関が当該処分当時に収集していた資料のみならず、その当時の事実に関する資料であって、その後に捜査機関が収集し、又は裁判所に提出されたものについても考慮に入れるべきである。