押収物が検察官の歳入編入処分により国の一般財産と混和し特定性を失つたときは、当該押収物の還付は不能である。
押収物が検察官の歳入編入処分により国の一般財産と混和し特定性を失つた場合と還付の可否
刑訴法123条,刑訴法222条,刑訴法430条1項
判旨
押収物の還付請求について、還付の対象物が検察官の歳入編入処分等により国の一般財産と混和し、特定性を喪失した場合には、還付は事実上不能となる。また、還付を受ける正当な権限があるとは認め難い者による請求は、適法な抗告理由を構成しない。
問題の所在(論点)
検察官による歳入編入処分等を経て、国の一般財産と混和し特定性を失った押収物について、還付請求が認められるか。また、還付請求権の存否が抗告の適法性にどう影響するか。
規範
押収物の還付(刑事訴訟法123条1項、222条1項)は、目的物の同一性が保持されていることを前提とする。目的物が他の財産と混和し、その特定性が失われた場合には、還付は物理的・法的性質上「不能」であると解される。
重要事実
申立人が押収物の還付を請求したが、当該押収物はすでに検察官による歳入編入処分がなされていた。その結果、押収物は国の一般財産と混和し、個別の特定性が失われるに至った。また、原審は申立人が当該押収物の所有者として還付を受ける正当な権限を有することを否定していた。
事件番号: 昭和44(し)70 / 裁判年月日: 昭和44年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の特別抗告(刑訴法433条)において、違憲主張が実質的な法令違反にすぎない場合や、判例違反の具体的摘示がない場合は、正当な抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対し最高裁判所へ特別抗告を申し立てた。抗告の趣旨において憲法違反を主張したが、その内容は実質的に単なる法令違反…
あてはめ
本件押収物は、歳入編入処分という公権的な手続を経て、国の一般財産に組み込まれている。この過程で他の金銭等と混和しており、もはや特定の押収物としてのアイデンティティを喪失している。したがって、特定の「物」を返還するという還付の性質上、履行不能な状態にあるといえる。さらに、申立人が正当な権限を有する事実も認められない以上、還付を求める前提を欠く。
結論
押収物が特定性を失い、還付が不能であるとした判断は相当であり、本件抗告を棄却する。
実務上の射程
押収物が金銭等の代替物であり、かつ手続を経て国庫等に混和した場合、還付請求という手段では救済が得られないことを示す。実務上は、没収の可否や還付手続の前提となる「特定性」の有無を検討する際の論拠となる。答案上は、還付不能の理屈として「特定性の喪失(混和)」を指摘する際に活用できる。
事件番号: 昭和43(し)91 / 裁判年月日: 昭和44年8月27日 / 結論: 棄却
司法警察員が押収物を被害者に還付した後、当該押収物が他に売却、搬出され、被害者方に存在しなくなつた場合には、当該被害者還付処分の取消を求める準抗告は、実益を欠き、不適法である。
事件番号: 昭和62(し)15 / 裁判年月日: 平成2年4月20日 / 結論: その他
刑訴法一二三条一項による押収物の還付は、被押収者が還付請求権を放棄するなどして原状を回復する必要がない場合又は被押収者に還付することができない場合のほかは、被押収者に対してすべきである。
事件番号: 昭和47(し)92 / 裁判年月日: 昭和48年3月30日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】押収物の還付に関する検察官の処分に対する準抗告において、目的物が既に還付されている場合には、当該申立ては法律上の利益を欠き、棄却されるべきである。 第1 事案の概要:申立人は、AおよびBがそれぞれ差し出した押収物の還付に関する検察官の処分に対し、準抗告を申し立てた。原審は、当該申立てが既に裁判を経…
事件番号: 昭和42(し)56 / 裁判年月日: 昭和43年2月29日 / 結論: 棄却
領置の際、提出者が「被害者に返して下さい」、または「私はいりません」もしくは「いりません」と申し出ている場合に、その申出が錯誤に基づいたものと認めるべきなんらの証跡もないときは、その申出の撤回を許すべきではない。