原決定が刑訴法四三〇条の準抗告を「却下」したことは違法であるとしてこれを取り消したうえ準抗告申立は利益を欠くとしてこれを棄却された事例
刑訴法411条1号,刑訴法430条
判旨
押収物の還付に関する検察官の処分に対する準抗告において、目的物が既に還付されている場合には、当該申立ては法律上の利益を欠き、棄却されるべきである。
問題の所在(論点)
押収物の還付を求める準抗告において、既に目的物が還付されている場合、当該準抗告の申立ては適法か(法律上の利益の有無)。
規範
検察官による押収物の還付等に関する処分に対し、刑訴法430条に基づき準抗告を申し立てるには、当該処分の取消しや変更を求める「法律上の利益」が存続していることを要する。目的物が既に還付され、申立ての目的が達せられている場合には、もはや不服申立ての対象となる処分の実益が失われているため、不適法として棄却(または却下)される。
重要事実
申立人は、AおよびBがそれぞれ差し出した押収物の還付に関する検察官の処分に対し、準抗告を申し立てた。原審は、当該申立てが既に裁判を経たものと同一であるとして却下したが、実際にはBの差出分については未だ審判がなされていなかった。しかし、記録によれば、準抗告の対象となっていた物件は、最高裁の審理時点において既に申立人に対して返還(受領)されていた。
あてはめ
本件において、申立人が還付を求めていた物件については、昭和47年12月2日付の「受領書」により、申立人自身が既にその返還を受けている事実が認められる。準抗告は検察官の処分の違法を是正し、還付等の適切な措置を求める手続であるが、既に還付という目的が達せられた以上、裁判所が重ねて還付を命ずるなどの裁判を行う実益はない。したがって、本件準抗告は法律上の利益を欠くに至ったといえる。
事件番号: 昭和58(す)20 / 裁判年月日: 昭和58年4月28日 / 結論: 棄却
一 公判不提出の押収物については、押収の基礎となつた被告事件がどの裁判に係属している場合であつても、特段の事情のない限り、現にその物の押収を継続している検察庁の検察官が還付等の処分をすべきである。 二 検察官の保管にかかる公判不提出の押収物に関する還付等の処分に対する刑訴法四三〇条一項所定の準抗告は、右押収の起訴となつ…
結論
本件準抗告は、法律上の利益を欠くため、棄却を免れない。
実務上の射程
準抗告等の不服申立てにおける「訴えの利益(法律上の利益)」の存続に関する一般的な判断枠組みを示すものである。実務上、事後的に目的が達せられた場合には、手続を維持する利益が消滅するため、棄却(本決定の構成)ないし却下の判断がなされることを確認する際に用いる。
事件番号: 昭和43(し)91 / 裁判年月日: 昭和44年8月27日 / 結論: 棄却
司法警察員が押収物を被害者に還付した後、当該押収物が他に売却、搬出され、被害者方に存在しなくなつた場合には、当該被害者還付処分の取消を求める準抗告は、実益を欠き、不適法である。
事件番号: 昭和52(し)114 / 裁判年月日: 昭和54年12月12日 / 結論: 棄却
押収物が検察官の歳入編入処分により国の一般財産と混和し特定性を失つたときは、当該押収物の還付は不能である。
事件番号: 昭和44(し)70 / 裁判年月日: 昭和44年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の特別抗告(刑訴法433条)において、違憲主張が実質的な法令違反にすぎない場合や、判例違反の具体的摘示がない場合は、正当な抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対し最高裁判所へ特別抗告を申し立てた。抗告の趣旨において憲法違反を主張したが、その内容は実質的に単なる法令違反…
事件番号: 昭和62(し)15 / 裁判年月日: 平成2年4月20日 / 結論: その他
刑訴法一二三条一項による押収物の還付は、被押収者が還付請求権を放棄するなどして原状を回復する必要がない場合又は被押収者に還付することができない場合のほかは、被押収者に対してすべきである。