一 公判不提出の押収物については、押収の基礎となつた被告事件がどの裁判に係属している場合であつても、特段の事情のない限り、現にその物の押収を継続している検察庁の検察官が還付等の処分をすべきである。 二 検察官の保管にかかる公判不提出の押収物に関する還付等の処分に対する刑訴法四三〇条一項所定の準抗告は、右押収の起訴となつた被告事件がどの裁判所に係属している場合であつても、その物の押収を継続している検察庁が還付等の処分をしたものと認められるときには、右検察官の所属する検察庁に対応する裁判所に申し立てるべきである。
一 公判不提出の押収物について還付等の処分をすべき検察官 二 検察官の保管にかかる公判不提出の押収物に関する還付等の処分に対する準抗告の管轄裁判所
刑訴法123条,刑訴法124条,刑訴法222条1項,刑訴法430条1項,刑訴法431条
判旨
検察官が保管する公判不提出の押収物の還付等に関する処分は、原則として、被告事件がどの裁判所に係属しているかを問わず、現にその物の押収を継続している検察庁の検察官が行う。したがって、当該処分に対する準抗告の管轄裁判所は、現に保管・押収を継続する検察庁に対応する裁判所となる。
問題の所在(論点)
検察官が保管する公判不提出の押収物に関し、還付拒否の処分を行った主体は誰か。また、その処分に対する不服申立て(準抗告)の管轄裁判所はいずれか。
規範
検察官が保管の責めに任じている公判不提出の押収物については、押収及び還付等の処分の根拠及び手続等を規定する刑事訴訟法等の趣旨に照らし、特段の事情のない限り、被告事件がいずれの裁判所に係属しているかを問わず、現にその物の押収を継続している検察庁の検察官において還付等の処分を行うべきである。これに対する準抗告(刑訴法430条1項)は、当該検察庁に対応する裁判所(同法431条)に対して申し立てるべきである。
重要事実
事件番号: 昭和47(し)92 / 裁判年月日: 昭和48年3月30日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】押収物の還付に関する検察官の処分に対する準抗告において、目的物が既に還付されている場合には、当該申立ては法律上の利益を欠き、棄却されるべきである。 第1 事案の概要:申立人は、AおよびBがそれぞれ差し出した押収物の還付に関する検察官の処分に対し、準抗告を申し立てた。原審は、当該申立てが既に裁判を経…
申立人は爆発物取締罰則違反幇助の被告事件に関し、東京地方検察庁(東京地検)に保管されている現金等の還付を最高検察庁(最高検)に請求した。最高検は同請求を東京地検に回付し、東京地検の検察官が最高検等の指示を受けた上で「還付しない」旨を申立人に通知した。申立人は、最高検の指示により還付拒否がなされたものとして、最高裁判所に準抗告を申し立てた。
あてはめ
本件押収物は、被告事件が最高裁判所に係属中であったが、現に東京地検において保管・押収が継続されていた。還付不相当との判断にあたり、最高検の指示があったとしても、それは検察庁内部の事務処理上の手続にすぎない。したがって、本件における還付拒否の処分主体は、現に保管の責めに任じている東京地検の検察官であると認められる。この場合、管轄裁判所は東京地検に対応する東京地方裁判所となる。
結論
本件準抗告は、管轄裁判所ではない最高裁判所に対してなされたものであり、不適法である。よって本件申立てを棄却する。
実務上の射程
公判不提出の押収物に関する還付請求の相手方および準抗告の管轄を決定する際の基準となる。被告事件の繋属先(審級)ではなく「現に保管している検察庁」を基準に管轄を判断する点に実務上の意義がある。答案上は、刑訴法431条の管轄の有無を論じる際のあてはめで活用すべき判例である。
事件番号: 昭和62(し)15 / 裁判年月日: 平成2年4月20日 / 結論: その他
刑訴法一二三条一項による押収物の還付は、被押収者が還付請求権を放棄するなどして原状を回復する必要がない場合又は被押収者に還付することができない場合のほかは、被押収者に対してすべきである。
事件番号: 昭和44(し)70 / 裁判年月日: 昭和44年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の特別抗告(刑訴法433条)において、違憲主張が実質的な法令違反にすぎない場合や、判例違反の具体的摘示がない場合は、正当な抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対し最高裁判所へ特別抗告を申し立てた。抗告の趣旨において憲法違反を主張したが、その内容は実質的に単なる法令違反…
事件番号: 平成15(し)42 / 裁判年月日: 平成15年6月30日 / 結論: その他
1 捜査機関による押収処分を受けた者は,刑訴法222条1項において準用する123条1項にいう「留置の必要がない」場合に当たることを理由として,当該捜査機関に対して押収物の還付を請求することができる。 2 捜査機関による押収処分を受けた者から,還付請求を却下した処分の取消しと自己への還付を求めて刑訴法430条2項の準抗告…
事件番号: 令和7(し)177 / 裁判年月日: 令和7年11月10日 / 結論: その他
刑訴法430条の準抗告裁判所は、捜査機関の処分の当否を判断するに当たり、捜査機関が当該処分当時に収集していた資料のみならず、その当時の事実に関する資料であって、その後に捜査機関が収集し、又は裁判所に提出されたものについても考慮に入れるべきである。