司法警察員のした押収処分を争う特別抗告が申立の利益を失ったとされた事例
判旨
押収物の還付が既になされた場合、当該押収処分の取消しを求める準抗告は申立ての利益を欠き、裁判をする実益がないものとして棄却される。
問題の所在(論点)
押収物件が還付され、押収状態が解消された後において、当該押収処分の取消しを求める準抗告(または特別抗告)に「申立ての利益」が認められるか。
規範
準抗告等の不服申立てにおいて、既に処分の目的が達せられ、または現状が回復されたことにより、処分の取消しによって得られる法的利益が消滅した場合には、申立ての利益を欠くものとして、裁判所は実体判断をすることなく申立てを退けるべきである。
重要事実
司法警察員は、被告発人(申立人代表者)から物件の任意提出を受けて押収し、また捜索差押許可状に基づき物件を押収した。申立人はこれらの押収処分の取消しを求めて準抗告(およびその後の特別抗告)を申し立てた。しかし、特別抗告の判断が示される前に、一部の物件は既に還付済みであり、残りの物件についても検察官による還付決定およびその告知が完了していた。
あてはめ
本件において、申立人が取消しを求めている押収物件は、既に申立人側に還付されているか、あるいは還付決定がなされ告知まで完了している。押収処分の取消しは、不当な占有状態を解くことを目的とするものであるが、既に物件が還付され占有が解かれている以上、当該処分を取り消したとしても申立人の権利状態に更なる回復をもたらす余地はない。したがって、本件不服申立てについては、もはや裁判をする実益がなくなったと評価される。
結論
本件抗告は申立ての利益を欠くに至ったものであるため、棄却する。
事件番号: 昭和43(し)91 / 裁判年月日: 昭和44年8月27日 / 結論: 棄却
司法警察員が押収物を被害者に還付した後、当該押収物が他に売却、搬出され、被害者方に存在しなくなつた場合には、当該被害者還付処分の取消を求める準抗告は、実益を欠き、不適法である。
実務上の射程
捜査手続における不服申立て(刑訴法429条等)全般に妥当する。違法な捜査によって得られた証拠の排除を目的とする場合は、別途公判手続において証拠能力を争うべきであり、準抗告等の手続はあくまで現状の処分を是正するものであるため、還付後の利益は否定される点に注意が必要である。
事件番号: 昭和45(し)18 / 裁判年月日: 昭和45年9月17日 / 結論: 棄却
司法警察員がした差押処分等の取消を求める準抗告棄却決定に対する特別抗告が最高裁判所に係属中に当該差押物件が準抗告申立人に還付された場合には、差押処分等の取消を求める法律上の利益を欠くに帰したものであり、特別抗告が、この法律上の利益があることを前提とするときは、前提を欠くものとして棄却を免れない(最高裁判所昭和四二年(し…
事件番号: 平成4(し)64 / 裁判年月日: 平成4年10月13日 / 結論: 棄却
差押処分が違法として取り消されたため、司法警察員が当該差押物を返還する行為は、刑訴法四三〇条二項の押収物の還付に関する処分には当たらず、これに対する準抗告の申立ては、不適法である。
事件番号: 令和7(し)177 / 裁判年月日: 令和7年11月10日 / 結論: その他
刑訴法430条の準抗告裁判所は、捜査機関の処分の当否を判断するに当たり、捜査機関が当該処分当時に収集していた資料のみならず、その当時の事実に関する資料であって、その後に捜査機関が収集し、又は裁判所に提出されたものについても考慮に入れるべきである。
事件番号: 昭和48(し)78 / 裁判年月日: 昭和48年10月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】抗告の理由として違憲を主張する場合であっても、理由についての具体的な主張を欠き、抗告期間内にその補充もなされないときは、適法な抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:抗告人が本件抗告において憲法違反を主張したが、その理由についての具体的な主張を欠いていた。また、抗告期間内にその具体的な内容を補充…