令和6年10月27日に行われた衆議院議員総選挙当時、公職選挙法13条1項、別表第1の定める衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、上記規定が憲法14条1項等に違反するものということはできない
判旨
衆議院小選挙区の投票価値の不均衡について、アダムズ方式を採用し較差を2倍未満に抑える現行の区割制度は合理性を有しており、選挙時の最大較差が2.059倍に達していても、それが自然的人口異動によるもので拡大の程度が著しくない限り、憲法に反する状態とはいえない。
問題の所在(論点)
本件区割規定が、本件選挙当時において、憲法14条1項等が求める投票価値の平等の要請に反し、国会の裁量権の限界を超える違憲な状態にあったといえるか。
規範
定数配分及び選挙区割りの合憲性は、国会の広範な裁量を前提としつつ、投票価値の平等を最も重要かつ基本的な基準として、行政区画、地勢等の諸要素を総合考慮した上で、国会の裁量権の行使が合理性を有するか否かによって判断される。具体的には、選挙区間の人口較差を相当程度縮小させ、その状態が安定的に持続するよう設けられた仕組み(区割制度)に合理性が認められる場合、その仕組みの下での較差拡大が、憲法の要請と相容れない新たな要因による場合や、制度の合理性を失わせるほど著しいものであるなどの特段の事情がない限り、直ちに違憲とはならない。
重要事実
令和4年の公職選挙法改正(本件区割規定)により、アダムズ方式を導入し、令和2年国勢調査に基づき140選挙区の区割りを改定した。この改定時の最大較差は1.999倍であった。しかし、その後初めて行われた令和6年の本件総選挙当日においては、自然的人口異動の結果、選挙人数の最大較差は1対2.059となり、較差が2倍以上となる選挙区が10箇所生じていた。
あてはめ
まず、10年ごとの大規模調査と5年ごとの簡易調査に基づきアダムズ方式で定数配分し、較差2倍未満を基準とする「本件区割制度」は、投票価値の平等を基本としつつ安定性も考慮したものであり、合理性を有する。次に、本件選挙時の最大較差2.059倍は、改定後の自然的な人口異動によるものであり、憲法上の要請に反する他の要因はうかがわれない。また、2倍をわずかに上回る程度の拡大は、選挙制度の合理性を失わせるほど著しいものともいえない。したがって、本件選挙区割りが憲法の要求に反する状態(違憲状態)に至っていたとは認められない。
結論
本件区割規定は、本件選挙当時において憲法14条1項等に違反するとはいえず、本件選挙は有効である。
実務上の射程
アダムズ方式導入後の新制度下での初判断。改定時に2倍未満(1.999倍)であっても、選挙時に2倍を僅かに超えた(2.059倍)事実のみでは「違憲状態」にも至らないとする、国会の裁量を広く認める判断枠組みを維持している。答案上は、制度自体の合理性と、個別選挙時の較差拡大の要因・程度を二段構えで検討する際の規範として活用する。
事件番号: 令和7(行ツ)155 / 裁判年月日: 令和7年9月26日 / 結論: 棄却
令和6年10月27日に行われた衆議院議員総選挙当時において、公職選挙法13条1項、別表第1の定める衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、上記規定が憲法14条1項等に違反するものということはできない。 (意見がある。)