令和3年10月31日施行の衆議院議員総選挙当時において、公職選挙法(令和4年法律第89号による改正前のもの)13条1項、別表第1の定める衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、上記規定が憲法14条1項等に違反するものということはできない。 (反対意見がある。)
衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りを定める公職選挙法(令和4年法律第89号による改正前のもの)13条1項、別表第1の規定の合憲性
憲法14条1項、憲法15条1項、憲法15条3項、憲法43条1項、憲法44条、公職選挙法(令和4年法律第89号による改正前のもの)13条1項、公職選挙法(令和4年法律第89号による改正前のもの)別表第1
判旨
衆議院小選挙区の定数配分及び区割りの合憲性は、投票価値の平等を最も重要かつ基本的な基準としつつ、他の合理的要素との調和を図る国会の広範な裁量権の行使として合理性を有するか否かによって判断される。本件選挙時の較差は最大1対2.079に達していたが、アダムズ方式を柱とする新区割制度の枠組みの中で是正されることが予定されており、その拡大も著しいとはいえないため、憲法に違反する状態にあったとはいえない。
問題の所在(論点)
本件選挙当時の衆議院小選挙区の区割規定(公職選挙法13条1項、別表第1)が、投票価値の平等を定める憲法14条1項等に違反し、選挙が無効となるか。具体的には、較差が2倍を超えたことが「違憲状態」に至っているといえるか。
規範
1. 憲法は投票価値の平等を要求するが、これは絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮し得る他の政策的目的との関連で調和的に実現されるべきものである。2. 衆議院選挙において、定数配分・区割りの決定には国会に広範な裁量が認められる。3. 具体的な合憲性判断は、議員1人当たりの人口の平等を最も重要かつ基本的な基準としつつ、行政区画、地勢、交通事情等の諸要素を総合考慮し、国会の裁量権の行使として合理性を有するか否かによって決せられる。4. 国会の定めた仕組みが、裁量権の限界を超えてこれを是認できない場合に初めて憲法違反となる。
重要事実
令和3年10月の衆議院総選挙(本件選挙)当時、小選挙区間の最大較差は1対2.079(鳥取1区と東京13区の間)であり、較差2倍以上の選挙区が29存在した。国会は平成28年改正法等により、10年ごとの大規模国勢調査の結果に基づき「アダムズ方式」で定数配分を行い、中間年の簡易国勢調査で2倍以上の較差が生じた場合に区割りを修正する「新区割制度」を導入していた。本件選挙は、この新区割制度に基づく本格的な定数再配分が実施される前の「本件区割規定」の下で行われたが、最大較差は平成29年選挙時の1.979倍から拡大していた。
あてはめ
1. 本件選挙時の較差拡大(1対2.079)は、平成29年選挙時より拡大しているが、これは自然的な人口異動によるものである。2. 新区割制度は、人口異動による較差拡大を前提としつつ、10年ごとのアダムズ方式による抜本的是正と、中間年の修正を組み合わせることで、投票価値の平等を確保しつつ制度の安定性を図る合理的仕組みである。3. 本件の較差拡大も、この新区割制度の枠組みの中で将来的に是正されることが予定されている。4. 較差の程度(約2.08倍)は、当該制度の合理性を失わせるほど著しいものとはいえず、憲法の要求と相容れない新たな要因によるものとも認められない。したがって、国会の裁量権の限界を超えたとはいえない。
結論
本件選挙当時において、本件区割規定が憲法の投票価値の平等の要求に反する状態(違憲状態)にあったとはいえず、合憲である。上告棄却。
実務上の射程
平成30年大法廷判決の枠組みを維持し、アダムズ方式を含む「新区割制度」の合理性を再認した。2倍を僅かに超える較差が生じても、それが現行制度の是正サイクルの範囲内であり、特段の事情がない限り、直ちに違憲状態とは評価されないことを示した。答案上は、一時的な2倍超過があっても制度全体の合理性(漸進的改善のプロセス)を重視する姿勢を論述する際に用いる。
事件番号: 令和7(行ツ)155 / 裁判年月日: 令和7年9月26日 / 結論: 棄却
令和6年10月27日に行われた衆議院議員総選挙当時において、公職選挙法13条1項、別表第1の定める衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、上記規定が憲法14条1項等に違反するものということはできない。 (意見がある。)