平成26年12月14日施行の衆議院議員総選挙当時において,公職選挙法13条1項,別表第1の定める衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りは,前回の平成24年12月16日施行の衆議院議員総選挙当時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったが,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず,上記規定が憲法14条1項等に違反するものということはできない。 (補足意見,意見及び反対意見がある。)
衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りを定める公職選挙法13条1項,別表第1の規定の合憲性
憲法14条1項,憲法15条1項,憲法15条3項,憲法43条1項,憲法44条,公職選挙法13条1項,公職選挙法別表第1
判旨
衆議院小選挙区の区割規定につき、1人別枠方式廃止後も定数再配分が不十分で較差2倍超の選挙区が存在する状態は「違憲状態」であるが、国会の是正努力が立法裁量の範囲内であれば、合理的期間を徒過したとはいえず違憲とはならない。
問題の所在(論点)
衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りに関する公職選挙法の規定が、投票価値の不平等により憲法14条1項等に違反するか。特に、不平等の「状態」と、是正のための「合理的期間」の徒過が認められるかが争点となった。
規範
定数配分及び選挙区割りの決定は国会の広範な裁量に委ねられるが、議員1人あたりの人口の平等(投票価値の平等)が最も重要かつ基本的な基準である。具体的には、①投票価値の較差が諸般の事情を総合考慮して憲法の平等の要求に反する「状態」に至っているか、②憲法上要求される合理的期間内に是正がなされなかったかの二段階で判断する。合理的期間の判断においては、是正のための措置の内容、検討事項、手続や作業の困難性を総合考慮し、国会の取組が司法判断の趣旨を踏まえた立法裁量の行使として相当といえるかを評価する。
重要事実
平成23年大法廷判決が「1人別枠方式」を失当とし、平成24年・25年の公職選挙法改正で「0増5減」の措置が採られ、本件(平成26年)総選挙が実施された。しかし、5県以外の定数配分は見直されず、本件選挙当日における選挙人数の最大較差は1対2.129に達し、較差2倍以上の選挙区が13存在していた。
あてはめ
①不平等の状態について:1人別枠方式廃止後の新区割基準に基づく定数の再配分が全府県で行われておらず、本件選挙時も較差2倍超の選挙区が複数生じていたことは、新区画審設置法の趣旨に沿った整備が実現されたとはいえず、違憲状態にある。②合理的期間について:平成23年大法廷判決から本件選挙まで約3年8か月が経過しているが、この間に2度の法改正を経て、平成22年国勢調査時点では人口較差を2倍未満に抑える改定が実現した。また、更なる抜本的改革に向けた有識者調査会が設置され検討が継続している。選挙制度の改正は国会の合意形成が容易ではないこと等に鑑みれば、本件までに更なる法改正に至らなかったとしても、是正に向けた取組は司法の判断の趣旨に沿うものであり、立法裁量の行使として不相当とはいえない。
結論
本件選挙時における区割規定は、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態(違憲状態)にはあったが、憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったとはいえないため、憲法14条1項等に違反しない。本件上告を棄却する。
実務上の射程
衆議院選挙における「違憲状態」と「違憲判決(無効・違法宣言)」を分ける合理的期間の判断枠組みを再確認した判例である。0増5減という暫定的な是正であっても、人口比例原則に向けた一定の前進があれば合理的期間内と評価される傾向を示す。答案では、単なる較差の数値だけでなく、直近の判決後の国会の具体的取組(改正内容や検討機関の設置状況)に触れて立法裁量の妥当性を論じる必要がある。
事件番号: 令和4(行ツ)130 / 裁判年月日: 令和5年1月25日 / 結論: 棄却
令和3年10月31日施行の衆議院議員総選挙当時において、公職選挙法(令和4年法律第89号による改正前のもの)13条1項、別表第1の定める衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、上記規定が憲法14条1項等に違反するものということはできない。 (反対意見がある…