平成24年12月16日施行の衆議院議員総選挙当時において,公職選挙法(平成24年法律第95号による改正前のもの)13条1項,別表第1の定める衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りは,前回の平成21年8月30日施行の衆議院議員総選挙当時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったが,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず,上記規定が憲法14条1項等に違反するものということはできない。 (意見及び反対意見がある。)
衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りを定める公職選挙法(平成24年法律第95号による改正前のもの)13条1項,別表第1の規定の合憲性
憲法14条1項,憲法15条1項,憲法15条3項,憲法43条1項,憲法44条,公職選挙法(平成24年法律第95号による改正前のもの)13条1項,公職選挙法(平成24年法律第95号による改正前のもの)別表第1
判旨
平成24年衆議院総選挙の区割規定は、1人別枠方式の廃止を含む是正措置が進行中であった等の事情に鑑み、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にはあったが、合理的期間内の是正がなされなかったとはいえず合憲である。
問題の所在(論点)
旧来の1人別枠方式に基づく区割規定(本件区割規定)が、平成23年大法廷判決後の本件選挙時点においても存置されていたことが、憲法14条1項等の投票価値の平等の要請に照らし、合理的期間内の是正を怠ったものとして違憲となるか。
規範
選挙制度の合憲性は、投票価値の平等と、行政区画、地勢等の諸要素を総合考慮した国会の裁量権行使の合理性によって判断される。具体的には、①投票価値の較差が憲法上の要求に反する状態(違憲状態)に至っているか、②その状態が合理的期間内に是正されなかったといえるか、という二段階の枠組みで判断する。合理的期間の有無は、是正に要する手続や作業の困難性、国会の取組が司法判断の趣旨を踏まえた裁量権行使として相当かという観点から総合的に評価する。
重要事実
平成6年改正以来の「1人別枠方式」により、平成21年選挙時に最大較差2.304倍に達していた。平成23年大法廷判決は同方式を「合理性を失い違憲状態」と判示。国会は同判決を受け協議を重ね、平成24年11月に1人別枠方式を廃止する法改正を行ったが、区割改定案の勧告を待たずに衆議院が解散された。その結果、同年12月の本件選挙は、是正前の旧区割(最大較差2.425倍)で施行された。なお、本件選挙後に「0増5減」を含む新区割が成立し、較差は2倍未満に是正された。
あてはめ
本件選挙時、最大較差が拡大し2倍を超えていた事実に照らせば、違憲状態にあったといえる。しかし、合理的期間については、(1)平成23年大法廷判決により初めて1人別枠方式が違憲状態と判示されたこと、(2)同方式の廃止は議員定数の再配分を伴い合意形成が困難な課題であること、(3)本件選挙前に1人別枠方式を廃止する法改正(平成24年改正法)が成立し是正に向けた「一定の前進」があったことを重視すべきである。本件選挙は解散のため旧区割で行わざるを得なかったが、その後に速やかに具体的な区割改定が実現した過程を併せれば、国会の取組は立法裁量の範囲内であり、合理的期間を徒過したとは断ぜられない。
結論
本件区割規定は憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったが、合理的期間内に是正されなかったとはいえず、憲法に違反しない。
実務上の射程
違憲状態から「合理的期間の徒過」を認めるハードルが高いことを示す。特に「法改正による是正の道筋」が示されている場合や、解散という政治的事情が介在する場合の国会の裁量を広く認める傾向にあるため、答案上は『是正の着手』の有無と『実現の困難性』を具体的に検討する際の指標となる。
事件番号: 平成27(行ツ)267 / 裁判年月日: 平成27年11月25日 / 結論: その他
平成26年12月14日施行の衆議院議員総選挙当時において,公職選挙法13条1項,別表第1の定める衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りは,前回の平成24年12月16日施行の衆議院議員総選挙当時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったが,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず,上記規定…