1 平成21年8月30日施行の総選挙当時において,衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条の定める衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りの基準のうち,同条2項のいわゆる1人別枠方式に係る部分は,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っており,同基準に従って平成14年に改定された公職選挙法13条1項,別表第1の定める選挙区割りも,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたが,いずれも憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず,上記各規定が憲法14条1項等に違反するものということはできない。 2 衆議院小選挙区選出議員の選挙において候補者届出政党に政見放送その他の選挙運動を認める公職選挙法の規定は,憲法14条1項等に違反するとはいえない。 (1につき補足意見,意見及び反対意見,2につき補足意見及び反対意見がある。)
1 衆議院小選挙区選出議員の選挙についてのいわゆる1人別枠方式を含む区割基準を定める衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条及び同基準に従って選挙区割りを定める公職選挙法13条1項,別表第1の各規定の合憲性 2 衆議院小選挙区選出議員の選挙において候補者届出政党に選挙運動を認める公職選挙法の規定の合憲性
(1,2につき)憲法14条1項,憲法15条1項,憲法15条3項,憲法43条1項,憲法44条 (1につき)公職選挙法13条1項,公職選挙法別表第1,衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条 (2につき)公職選挙法131条1項,公職選挙法141条1項,公職選挙法141条2項,公職選挙法141条6項,公職選挙法141条の2第1項,公職選挙法142条1項,公職選挙法142条2項,公職選挙法142条8項,公職選挙法143条1項,公職選挙法143条3項,公職選挙法144条1項,公職選挙法144条4項,公職選挙法149条1項,公職選挙法150条1項,公職選挙法150条4項,公職選挙法151条の5,公職選挙法161条1項,公職選挙法161条の2
判旨
衆議院小選挙区選出議員の定数配分規定(いわゆる1人別枠方式)は、新制度導入時の激変緩和等の合理性はあったが、制度定着後はその合理性を失い、投票価値の平等の要求に反する状態に至っていた。もっとも、前回の合憲判断から本件選挙までの期間を考慮すると、憲法上要求される合理的期間内の是正がなされなかったとはいえず、直ちに違憲とはならない。
問題の所在(論点)
1. 衆議院小選挙区の定数配分における「1人別枠方式」およびこれに基づく区割規定は、投票価値の平等の要請に反し憲法14条1項に違反するか。 2. 候補者届出政党とそれ以外の候補者との間で選挙運動の内容に差異を設ける規定は、憲法14条1項等に違反するか。
規範
投票価値の平等は、国会が正当に考慮できる他の政策的目的との関連で調和的に実現されるべきであるが、議員1人当たりの人口が可能な限り平等に保たれることが最も重要かつ基本的な基準である。特定の選挙制度が憲法に違反するかは、都道府県を基礎とする等の諸事情を総合考慮してもなお、国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するか否かによって判断される。ただし、制度導入時の特殊な事情に基づく合理性には時間的限界があり、制度が定着し安定した段階ではその合理性は失われる。
重要事実
平成21年施行の衆議院総選挙につき、小選挙区の区割基準である「1人別枠方式」(各都道府県にまず1議席を配当し、残りを人口比例で配分する方式)により、選挙区間の1票の格差が最大2.304倍に達していた。原告らは、この区割規定および政党所属候補者を優遇する選挙運動規定が憲法14条1項等に違反し無効であると主張して提訴した。
あてはめ
1. 1人別枠方式は、新制度導入に際し、人口の少ない県の定数急激減を避け国政の安定を図る目的(激変緩和)で採用され、当初は一定の合理性があった。しかし、本件選挙時は制度導入から10年以上経過し、制度は定着・安定していたため、当該合理性は失われていた。格差の主要因がこの方式にある以上、本件区割規定は憲法の要求に反する状態にあった。しかし、前回の最高裁大法廷判決(平成19年)が合憲判断を示していたことも考慮すれば、本件選挙までに是正されなかったことが合理的期間を徒過したものとは断定できない。 2. 選挙運動の差異については、政党本位の選挙を実現するという合理的な立法目的があり、無所属候補者らの表現の自由が不当に制約されているとまではいえないため、裁量の範囲内である。
結論
本件区割規定および選挙運動規定は、憲法14条1項等に違反するとはいえず、本件選挙は有効である。
実務上の射程
1人別枠方式を「違憲状態」と初めて明言した重要な判例。答案では、1票の格差問題において「合理的な理由」の有無だけでなく、その理由の「時間的限界」を指摘する際の論拠として用いる。また、違憲判断(違憲判決)と違憲状態(合理的期間の徒過待ち)を区別する際の手本となる。
事件番号: 平成13(行ツ)223 / 裁判年月日: 平成13年12月18日 / 結論: 棄却
1 衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条の衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りの基準を定める規定は,憲法14条1項,43条1項に違反するものとはいえず,上記基準に従って定められた公職選挙法13条1項,別表第一の上記区割りを定める規定は,平成12年6月25日施行の衆議院議員選挙当時,憲法14条1項,43条1項に違反していた…