1 衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条のいわゆる1人別枠方式を含む衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りの基準を定める規定は,憲法14条1項に違反するものとはいえず,平成14年法律第95号による公職選挙法の改正により上記基準に従って改定された同法13条1項,別表第1の上記区割りを定める規定は,その改定当時においても,平成17年9月11日施行の衆議院議員選挙当時においても,憲法14条1項に違反していたものということはできない。 2 衆議院小選挙区選出議員の選挙において候補者届出政党に政見放送その他の選挙運動を認める公職選挙法の規定は,候補者届出政党に所属する候補者とこれに所属しない候補者との間に選挙運動の上で差異を生ずるものであるが,その差異が合理性を有するとは考えられない程度に達しているとまで断ずることはできず,憲法14条1項に違反するとはいえない。 (1につき補足意見,意見及び反対意見,2につき意見及び反対意見がある。)
1 衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条のいわゆる1人別枠方式を含む衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りの基準を定める規定及び公職選挙法13条1項,別表第1の上記区割りを定める規定の合憲性 2 衆議院小選挙区選出議員の選挙において候補者届出政党に選挙運動を認める公職選挙法の規定の合憲性
(1,2につき)憲法14条1項 (1につき)公職選挙法13条1項,公職選挙法別表第1,衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条 (2につき)公職選挙法131条1項,公職選挙法141条1項,公職選挙法141条2項,公職選挙法141条6項,公職選挙法141条の2第1項,公職選挙法142条1項,公職選挙法142条2項,公職選挙法142条8項,公職選挙法143条1項,公職選挙法143条3項,公職選挙法144条1項,公職選挙法144条4項,公職選挙法149条1項,公職選挙法150条1項,公職選挙法150条4項,公職選挙法151条の5,公職選挙法161条1項,公職選挙法161条の2
判旨
衆議院小選挙区の「1人別枠方式」を含む定数配分規定は、投票価値の平等に反し合理性を欠く程度に達しておらず合憲である。また、候補者届出政党と無所属候補者間の選挙運動の差異も、政党本位の選挙制度という目的に照らし、裁量の範囲内として是認される。
問題の所在(論点)
①1人別枠方式を前提とした衆議院小選挙区の区割規定は、投票価値の平等を定める憲法14条1項等に違反するか。②候補者届出政党の所属か否かによる選挙運動の差異は、法の下の平等(14条1項等)に違反するか。
規範
定数配分及び区割りの合憲性は、投票価値の不平等が、国会が考慮し得る諸般の要素を斟酌してもなお一般に合理性を有すると考えられない程度に達し、裁量権の限界を超えているか否かにより決する。選挙運動の規制についても、政党の重要な役割に鑑みた政党本位の制度構築は裁量の範囲内であり、候補者間の差異が合理性を是認し得ない程度に達しない限り合憲である。
重要事実
平成17年衆院選において、1人別枠方式(各都道府県にまず1議席を配分し、残りを人口比例配分する方式)を維持した結果、最大格差は人口比1対2.064、当日選挙人数比1対2.171となった。また、公職選挙法は「候補者届出政党」に所属する候補者に対し、無所属候補者には認められない政見放送や追加の文書図画頒布等の選挙運動を認めていたため、選挙人らが選挙無効を求めて提訴した。
あてはめ
①について、1人別枠方式は過疎地域への配慮や都道府県という基礎的単位の重視という政策的目的があり、最大格差も2倍を極めてわずかに超える程度にとどまっているため、合理性を欠く程度とはいえない。②について、政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素であり、政党本位の選挙を実現する目的には合理性がある。政見放送の差異等は単なる程度の違いを超えるが、他の手段による補完が可能であることや実施上の困難性を考慮すれば、裁量の限界を超えたとはいえない。
結論
本件区割規定及び選挙運動に関する規定はいずれも合憲であり、本件選挙は有効である。
実務上の射程
衆議院における「1人別枠方式」を合憲とした最後の判決である(後の平成23年判決で違憲状態とされる)。裁量権の逸脱を判断する際の「1対2」という基準の重要性を示すとともに、選挙運動の格差については「政党本位」という立法目的から裁量を広く認める枠組みを提示している。
事件番号: 平成22(行ツ)207 / 裁判年月日: 平成23年3月23日 / 結論: 棄却
1 平成21年8月30日施行の総選挙当時において,衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条の定める衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りの基準のうち,同条2項のいわゆる1人別枠方式に係る部分は,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っており,同基準に従って平成14年に改定された公職選挙法13条1項,別表第1の定める選挙区割…