公職選挙法(平成六年法律第二号による改正前のもの)一三条一項、別表第一、附則七項ないし一一項の衆議院議員の議員定数配分規定は、平成五年七月一八日施行の衆議院議員選挙当時、憲法一四条一項に違反していたものということはできない。
公職選挙法(平成六年法律第二号による改正前のもの)一三条一項、別表第一、附則七項ないし一一項の衆議院議員の議員定数配分規定の合憲性
憲法14条1項,公職選挙法(平成6年法律第2号による改正前のもの)13条1項,公職選挙法(平成6年法律第2号による改正前のもの)別表第1,公職選挙法(平成6年法律第2号による改正前のもの)附則7項ないし11項
判旨
憲法14条1項は投票価値の平等を要求するが、選挙制度の決定は国会の広い裁量に委ねられている。投票価値の不平等が国会の裁量権の合理的行使の限界を超えていると認められない限り、議員定数配分規定は合憲である。
問題の所在(論点)
本件衆議院議員定数配分規定が、憲法14条1項の保障する「投票価値の平等」に反し、国会の裁量権の限界を超えて違憲といえるか。
規範
憲法14条1項は投票価値の平等を要求するが、具体的選挙制度の決定は原則として国会の裁量に委ねられる(43条、47条)。定数配分規定の合憲性は、国会の裁量権の合理的行使として是認されるか否かによって決する。具体的には、投票価値の不平等が、国会において通常考慮し得る諸般の要素(行政区画、地理的状況、社会情勢の変化等)を斟酌してもなお、一般に合理性を有するものとは考えられない程度に達しているときは、裁量権の限界を超えたものと推定され、これを正当化すべき特別の理由がない限り違憲となる。
重要事実
平成5年施行の衆議院議員総選挙において、1992年の公職選挙法改正(いわゆる9増10減)を経た後の定数配分規定に基づき、選挙区間の議員1人当たりの選挙人数の最大較差が1対2.82であった。前回の改正前(1対3.18)が違憲状態と判断されたことを受け、国会は較差是正のための改正を行った結果、この較差が生じていた。
あてはめ
本件の最大較差1対2.82は、従前の判例で違憲状態とされた1対3.18を是正するために国会が「9増10減」の改正を行った結果である。この改正の経緯に照らせば、人口比例という最も重要かつ基本的な基準を考慮しつつ、他の諸般の要素を斟酌したものといえる。したがって、この程度の較差は、一般に合理性を有するものとは考えられない程度に達しているとはいえず、国会の裁量権の合理的行使の範囲内にあると評価される。
結論
本件定数配分規定は憲法14条1項に違反しない。
実務上の射程
衆議院選挙(当時の中選挙区制)における投票価値の平等に関する判例。判例の枠組みである「裁量権の合理的行使の限界」や「一般に合理性を有しない程度」という基準は、現在の小選挙区比例代表並立制下での定数訴訟においても、裁量の幅や違憲状態の判断基準を論じる際の基礎となる。また、本判決では反対意見で事情判決(行訴法31条)の適用に触れており、違憲判決が出た際の救済手法も答案上の検討事項となる。
事件番号: 昭和61(行ツ)102 / 裁判年月日: 昭和62年2月17日 / 結論: 棄却
東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和四四年東京都条例第五五号)の議員定数配分規定は、昭和六〇年七月七日の東京都議会議員選挙当時、公職選挙法一五条七項に違反していたものである。