申立人が釈放された場合における刑訴法207条の3第1項の請求を却下する裁判に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告申立ての許否(消極)
刑訴法207条の3第1項、刑訴法433条
判旨
勾留状の個人特定事項の通知請求を却下する裁判の取消しを求める不服申立ては、申立人が釈放された場合には、当該取消しを求める法律上の利益を欠き、不適法となる。
問題の所在(論点)
勾留状の個人特定事項の通知請求を却下する裁判に対し、取消しを求めて特別抗告がなされた場合において、申立人が既に釈放されているときに、当該申立てに係る「法律上の利益」が認められるか。
規範
不服申立ての適法性判断においては、当該裁判の取消しを求める「法律上の利益」が存続していることが必要である。身体拘束や手続上の権利行使に関する不服申立てにおいて、既にその目的となる状態が解消されている場合には、特段の事情がない限り、訴えの利益(法律上の利益)は消滅する。
重要事実
申立人は、刑訴法207条の3第1項に基づき、勾留状の個人特定事項の通知を請求したが、却下された。申立人はこの決定の取消しを求めて特別抗告を申し立てたが、決定がなされる前の令和7年8月26日に既に釈放されていた。
あてはめ
本件において、申立人は既に釈放されており、身体拘束を受けている状態にはない。刑訴法207条の3第1項の通知請求は、勾留されている状態を前提とした権利行使またはその付随的手続に関連するものであるが、釈放により当該通知を受ける実益や、却下裁判を取り消す必要性が消滅したといえる。したがって、本件抗告を継続する法律上の利益は失われている。
事件番号: 昭和42(し)1 / 裁判年月日: 昭和42年5月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留に対する準抗告を棄却した決定に対し特別抗告がなされた場合であっても、被疑者が釈放されたときは、当該抗告について裁判をする実益がない。 第1 事案の概要:被疑者は銃砲刀剣類所持等取締法違反等の容疑で勾留され、これに対する準抗告が棄却されたため、弁護人が特別抗告を申し立てた。しかし、当該特別抗告の…
結論
本件抗告は、法律上の利益を欠き不適法であるため、棄却される。
実務上の射程
刑事手続における不服申立て全般において、釈放による訴えの利益喪失の原則を確認したものである。実務上、勾留関連の準抗告や特別抗告中に釈放された場合、即座に不適法却下(または棄却)の対象となることを念頭に置く必要がある。
事件番号: 昭和44(し)20 / 裁判年月日: 昭和44年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留状により勾留されていた被疑者が釈放された場合には、勾留の取消し等を求める不服申立ての利益が消滅するため、裁判所は原決定を取り消す実益がないものとして抗告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:申立人は、昭和44年1月27日に簡易裁判所の裁判官が発した勾留状に基づき勾留されていた。しかし、その後…
事件番号: 平成19(し)170 / 裁判年月日: 平成19年6月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】確定した有罪判決の執行を現に受けている者による、当該事件係属中の勾留の取消請求は、刑事訴訟法上の意味ある申立てとは認められない。 第1 事案の概要:抗告人は、確定した有罪判決に基づき現に刑の執行を受けている状態にあった。抗告人は、当該判決の基礎となった被告事件の係属中になされた勾留について、その取…
事件番号: 平成7(し)40 / 裁判年月日: 平成7年4月12日 / 結論: 棄却
一 勾留に関する処分を行う裁判官は職権により被疑者又は被告人の勾留場所を変更する旨の移監命令を発することができる。 二 裁判官に移監命令の職権発動を促す趣旨でされた勾留取消し請求を却下した裁判に対する不服申立ては許されない。
事件番号: 昭和27(し)45 / 裁判年月日: 昭和29年1月19日 / 結論: 棄却
保釈請求却下決定に関して特別抗告が申し立てられた後に、被告人が保釈により釈放された場合には、右抗告は、その理由について裁判をする実益がない。