一 勾留に関する処分を行う裁判官は職権により被疑者又は被告人の勾留場所を変更する旨の移監命令を発することができる。 二 裁判官に移監命令の職権発動を促す趣旨でされた勾留取消し請求を却下した裁判に対する不服申立ては許されない。
一 勾留に関する処分を行う裁判官が職権で移監命令を発することの可否 二 移監命令の職権発動を促す趣旨でされた勾留取消し請求を却下した裁判に対する不服申立ての許否
刑訴法60条,刑訴法64条1項,刑訴法87条,刑訴法429条,刑訴規則80条
判旨
勾留場所の変更を求める趣旨の勾留取消請求は、裁判官の職権発動を促すものにすぎず、これに対する却下決定は裁判官が職権を行使しない趣旨の裁判であって、不服申立ての対象とならない。
問題の所在(論点)
勾留場所の変更を実質的な目的とする勾留取消請求が却下された場合、これに対して刑事訴訟法上の不服申立てを行うことができるか。
規範
裁判官は職権により、被疑者又は被告人の勾留場所を変更する旨の移監命令を発することができる。この職権発動を促す趣旨でされた申立てに対し、裁判官がこれを却下する裁判をした場合、それは職権を発動しない旨の判断にすぎないため、これに対する不服申立て(準抗告等)は許されない。
重要事実
申立人は、勾留取消請求を行ったが、その実質的な内容は特定の勾留場所から別の場所への変更を求めるものであった。原原裁判所はこの請求を却下し、これに対し申立人が準抗告および抗告を行った事案である。
事件番号: 平成9(し)179 / 裁判年月日: 平成9年10月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留取消し請求を却下する裁判は、刑事訴訟規則6条にいう「訴訟手続」には含まれない。 第1 事案の概要:勾留取消しの請求に対し、裁判所がこれを却下する裁判を行った事案において、当該却下の裁判が刑事訴訟規則6条に規定される「訴訟手続」に該当するか否かが争点となり、特別抗告がなされた。 第2 問題の所在…
あてはめ
本件勾留取消請求の内容は、その趣旨に照らせば、裁判官に対し勾留場所を変更する「移監命令」の職権発動を促すものと解される。原原裁判がこの請求を却下したことは、裁判官が当該職権を行使しないという判断を示したものといえる。刑事訴訟法上、職権発動を促す申立てに対する不認容の判断は不服申立ての対象となる「裁判」には当たらないため、本件準抗告および抗告は不適法であると解される。
結論
本件不服申立ては不適法であり、却下されるべきである。
実務上の射程
勾留場所の指定や変更(移監)は裁判官の専権的・職権的事項であり、被告人側に申立権がないことを示している。答案上、勾留場所への不服を「勾留の理由や必要性」の問題として争う余地はないとする際に引用すべき判例である。
事件番号: 平成7(し)44 / 裁判年月日: 平成7年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官が職権発動を促す申立てに対して「職権を発動しない」との措置を採った場合、それは不服申立ての対象となる「裁判」には当たらない。 第1 事案の概要:申立人が京都地方裁判所の裁判官に対し、何らかの措置(詳細は判決文からは不明)を講じるよう職権発動を求めた。これに対し、当該裁判官は「職権を発動しない…
事件番号: 昭和42(し)26 / 裁判年月日: 昭和42年8月31日 / 結論: 棄却
甲被疑事実による勾留を利用して乙被疑事実につき取り調べた後、いつたん釈放し直ちに乙被疑事実により逮捕勾留した場合において、乙事実について公訴が提起され、その後も勾留理由があるときは、起訴前の段階における右のような勾留およびその勾留中の捜査官の取調べの当否は、起訴後における勾留の効力に影響を及ぼさない。
事件番号: 昭和44(し)63 / 裁判年月日: 昭和44年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴前の勾留段階における捜査官の取調べの不当性は、起訴後の勾留の効力に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和44年9月5日に公訴が提起され、以降は「被告人」として勾留されていた。被告人側は、起訴前の勾留段階において捜査官による不当な取調べが行われたことを理由に、現在(起訴後)の勾留の…
事件番号: 令和7(し)1043 / 裁判年月日: 令和7年11月27日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】勾留の必要性の判断において、第1審が罪証隠滅の現実的可能性を具体的に検討し、一定の合理性のある理由でこれを否定した場合、抗告審が第1審の評価の不合理性を実質的に示さずにこれを取り消すことは許されない。罪証隠滅のおそれは、客観的証拠の収集状況や関係者との人的関係の有無等を総合し、現実的可能性の程度を…