地方裁判所裁判官がした移監について「職権を発動しない」との措置に対する準抗告申立てが不適法とされた事例
判旨
裁判官が職権発動を促す申立てに対して「職権を発動しない」との措置を採った場合、それは不服申立ての対象となる「裁判」には当たらない。
問題の所在(論点)
裁判官が職権発動を促す申立てに対し「職権を発動しない」との措置を採った場合に、それが刑事訴訟法上の不服申立ての対象となる「裁判」に該当するか。
規範
刑事訴訟法上の準抗告(429条1項)や抗告(420条、433条等)の対象となるためには、裁判所または裁判官による法的な効果を伴う「裁判」が存在しなければならない。職権発動を促す申立てに対し、裁判官がこれに応じない旨の意思表示(職権不発動の措置)をしたとしても、それは単なる事実上の応答に過ぎず、独立した裁判としての性質を有しないため、これに対する不服申立ては不適法である。
重要事実
申立人が京都地方裁判所の裁判官に対し、何らかの措置(詳細は判決文からは不明)を講じるよう職権発動を求めた。これに対し、当該裁判官は「職権を発動しない」との措置を採った。申立人はこの措置を不服として準抗告を申し立て、さらにその棄却(または却下)に対して最高裁判所に抗告を行った事案である。
あてはめ
本件において、京都地方裁判所の裁判官が採ったのは「職権を発動しない」という消極的な措置である。これは申立人の権利義務を直接確定する裁判の告知とは認められず、裁判所としての法的な判断が示された「裁判」があったとはいえない。したがって、準抗告の前提となる「裁判」が欠如しているといえる。適法な準抗告の申立てが存在しない以上、これに対する抗告もまた、不適法な前提に基づくものとして許容されない。
結論
事件番号: 平成7(し)40 / 裁判年月日: 平成7年4月12日 / 結論: 棄却
一 勾留に関する処分を行う裁判官は職権により被疑者又は被告人の勾留場所を変更する旨の移監命令を発することができる。 二 裁判官に移監命令の職権発動を促す趣旨でされた勾留取消し請求を却下した裁判に対する不服申立ては許されない。
裁判官が職権を発動しない措置を採ったとしても、それに対する不服申立ては不適法であり、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
裁判所の職権事項(公判前整理手続の付議や証拠調べの開始等)に関して、当事者が職権発動を促す申立てを行い、それが拒否された場合の不服申立ての可否を論じる際に活用できる。形式的裁判の存否を論じる際の有力な根拠となる。
事件番号: 平成27(し)483 / 裁判年月日: 平成27年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】拘置所職員が行った弁護人からの飲食物差入れ拒否および弁護人への宅下げ禁止処分に対しては、刑事訴訟法430条に基づくいわゆる準抗告を申し立てることはできない。 第1 事案の概要:拘置所に収容されていた被告人に対し、拘置所職員が、弁護人からの飲食物の差入れを拒否し、かつ弁護人への宅下げを禁止する処分を…
事件番号: 昭和48(し)64 / 裁判年月日: 昭和48年8月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官による逮捕状の発付は、裁判所による裁判ではなく裁判官による「裁判外の処分」に当たるが、これに対する準抗告(刑訴法429条1項)等の不服申立の道は法上存しない。 第1 事案の概要:申立人は、賍物収受被疑事件において簡易裁判所裁判官が発付した逮捕状に対し、準抗告を申し立てた。これを受けた原審(地…
事件番号: 昭和61(し)71 / 裁判年月日: 昭和61年9月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留執行停止の申立ては裁判所の職権発動を促す趣旨にとどまり、裁判所はこれに応答する義務を負わないため、職権を発動しない旨の措置は不服申立ての対象となる「決定」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人側から勾留執行停止の申立てがなされたが、広島高等裁判所岡山支部はこれに対し「職権発動せず」との措置…
事件番号: 昭和26(し)33 / 裁判年月日: 昭和27年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による移監措置に対する不服申し立てについて、憲法違反を主張する場合であっても、その実質が単なる措置への非難に留まるものは刑事訴訟法405条の事由に該当せず、特別抗告は棄却される。 第1 事案の概要:抗告人は、検察官が行った自らに対する移監措置について、憲法違反を主張して特別抗告を申し立てた。…