勾留執行停止の申立につき高等裁判所がとった「職権発動せず」との措置は不服申立の対象たる裁判には当たらないとして右措置に対する特別抗告が不適法とされた事例
刑訴法95条,刑訴法434条,刑訴法426条1項
判旨
勾留執行停止の申立ては裁判所の職権発動を促す趣旨にとどまり、裁判所はこれに応答する義務を負わないため、職権を発動しない旨の措置は不服申立ての対象となる「決定」には当たらない。
問題の所在(論点)
被告人等による勾留執行停止の申立てに対し、裁判所が「職権を発動しない」旨の措置をとった場合、これが刑事訴訟法上の抗告の対象となる「決定」に該当するか。
規範
勾留執行停止(刑事訴訟法95条)は裁判所の職権によって行われるものであり、被告人等からの申立ては裁判所の職権発動を促す意味を有するにすぎない。したがって、裁判所にはこれに応答する裁判を行う義務はなく、職権を発動しない旨の措置は不服申立ての対象となる「裁判所の決定」には該当しない。
重要事実
被告人側から勾留執行停止の申立てがなされたが、広島高等裁判所岡山支部はこれに対し「職権発動せず」との措置をとった。これに対し、被告人側が不服として抗告を申し立てた事案である。
あてはめ
勾留執行停止は法律上、裁判所の専権に属する職権事項である。本件において裁判所がとった「職権発動せず」との措置は、申立てに応答してなされた裁判ではなく、単に職権を行使しないことを確認した内部的な判断にすぎない。裁判所の決定が存在しない以上、これに対して抗告を申し立てることは法的に許容されないと解される。
事件番号: 昭和25(し)33 / 裁判年月日: 昭和28年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官に対する忌避の申立てにより訴訟手続を停止すべき場合であっても、被告人に対する勾留の更新決定をすることは、刑事訴訟規則11条ただし書にいう「急速を要する場合」に該当し、適法である。 第1 事案の概要:被告人が担当裁判官に対して忌避の申立てを行った。当該裁判官は、忌避申立てに伴う訴訟手続の停止期…
結論
本件抗告は不適法であり、棄却されるべきである。
実務上の射程
刑事訴訟手続における職権事項(勾留執行停止、保釈の職権取消等)への申立ての法的性格を論じる際の基礎となる。答案上は、当事者に申立権がない事項についての裁判所の応答は「裁判」にあたらず、不服申立ての適格を欠くことを説明する際に活用する。
事件番号: 平成9(し)125 / 裁判年月日: 平成10年2月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法314条1項本文に基づく公判手続の停止決定は、被告人を生涯にわたり被告人の地位に置くことを決定するものではないから、憲法37条1項の迅速な裁判を受ける権利に違反しない。 第1 事案の概要:窃盗被告事件の被告人(申立人)に対し、裁判所が刑事訴訟法314条1項本文に基づき公判手続を停止する旨…
事件番号: 平成7(し)44 / 裁判年月日: 平成7年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官が職権発動を促す申立てに対して「職権を発動しない」との措置を採った場合、それは不服申立ての対象となる「裁判」には当たらない。 第1 事案の概要:申立人が京都地方裁判所の裁判官に対し、何らかの措置(詳細は判決文からは不明)を講じるよう職権発動を求めた。これに対し、当該裁判官は「職権を発動しない…
事件番号: 昭和29(し)49 / 裁判年月日: 昭和29年9月18日 / 結論: 棄却
刑訴第四二九条による請求(いわゆる準抗告)についてした決定に対しては、高裁に抗告をすることはできない。
事件番号: 昭和51(し)20 / 裁判年月日: 昭和51年3月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官手持証拠についての釈明命令をしない旨の処分に対する異議申立を棄却する決定は、判決前の訴訟手続に関する決定であり、刑事訴訟法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には該当しない。 第1 事案の概要:被告人側が検察官の手持証拠に関し、裁判所に対して釈明命令を発する…