刑訴法314条1項により公判手続を停止したことが憲法37条1項に違反するという主張が前提を欠くとされた事例
憲法37条1項,刑訴法314条1項
判旨
刑事訴訟法314条1項本文に基づく公判手続の停止決定は、被告人を生涯にわたり被告人の地位に置くことを決定するものではないから、憲法37条1項の迅速な裁判を受ける権利に違反しない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法314条1項本文に基づく公判手続の停止決定が、被告人を生涯にわたり被告人の地位に拘束するものとして、憲法37条1項の「迅速な裁判」を受ける権利に違反するか。
規範
公判手続の停止(刑事訴訟法314条1項本文)が、被告人を不当に長期間被告人の地位に留め置く性質のものでない限り、憲法37条1項が保障する「迅速な裁判」を受ける権利を侵害するものとはいえない。
重要事実
窃盗被告事件の被告人(申立人)に対し、裁判所が刑事訴訟法314条1項本文に基づき公判手続を停止する旨の決定(原決定)を行った。これに対し、被告人側は、当該停止決定によって生涯にわたり被告人の地位に置かれることになり、迅速な裁判を受ける権利を定めた憲法37条1項に違反すると主張して抗告した。
あてはめ
本件における原決定は、刑事訴訟法314条1項本文の規定に基づき、被告人が心神喪失の状態にある等の理由により公判手続を一時的に停止したものである。この決定は、あくまで現状の訴訟能力の欠如等に対応するための手続的措置にすぎず、申立人が主張するように「生涯にわたり被告人の地位に置くこと」までを確定的に決定したものではない。したがって、迅速な裁判を受ける権利を侵害するという主張は、前提を欠くものといえる。
事件番号: 平成26(行ト)55 / 裁判年月日: 平成26年8月19日 / 結論: 棄却
逃亡犯罪人引渡法35条1項の規定が,同法14条1項に基づく逃亡犯罪人の引渡命令につき,行政手続法第3章の規定の適用を除外し,逃亡犯罪人引渡法10条1項3号の決定がされたのを受けて行われる上記命令の発令手続において改めて当該逃亡犯罪人に弁明の機会を与えることを要しないものとしていることは,憲法31条の法意に反しない。
結論
本件公判手続停止決定は憲法37条1項に違反しない。したがって、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
被告人の訴訟能力欠如による手続停止が、直ちに迅速な裁判の原則に反しないことを確認した事例である。実務上、回復の見込みがない場合の訴訟終了(公訴棄却等)の可否については、本判決の範囲を超えた議論となるが、一時的な停止決定自体は合憲であるとする論拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(し)33 / 裁判年月日: 昭和28年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官に対する忌避の申立てにより訴訟手続を停止すべき場合であっても、被告人に対する勾留の更新決定をすることは、刑事訴訟規則11条ただし書にいう「急速を要する場合」に該当し、適法である。 第1 事案の概要:被告人が担当裁判官に対して忌避の申立てを行った。当該裁判官は、忌避申立てに伴う訴訟手続の停止期…
事件番号: 昭和38(し)33 / 裁判年月日: 昭和39年3月12日 / 結論: 棄却
刑訴法第二二条は、憲法第三七条第一項に違反しない。
事件番号: 昭和61(し)71 / 裁判年月日: 昭和61年9月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留執行停止の申立ては裁判所の職権発動を促す趣旨にとどまり、裁判所はこれに応答する義務を負わないため、職権を発動しない旨の措置は不服申立ての対象となる「決定」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人側から勾留執行停止の申立てがなされたが、広島高等裁判所岡山支部はこれに対し「職権発動せず」との措置…
事件番号: 昭和58(し)14 / 裁判年月日: 昭和58年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の事件を担当する裁判官が、共犯者の事件審理を通じて被告人の事件内容に関する知識を得ていたとしても、それのみでは不公平な裁判をするおそれがあるとはいえず、憲法37条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の事件の審理を担当した裁判官が、それに先立って共犯者の事件の審理を担当していた。抗告人…