判旨
裁判官に対する忌避の申立てにより訴訟手続を停止すべき場合であっても、被告人に対する勾留の更新決定をすることは、刑事訴訟規則11条ただし書にいう「急速を要する場合」に該当し、適法である。
問題の所在(論点)
裁判官に対する忌避の申立てによって訴訟手続を停止すべき期間中に、被告人に対する勾留の更新決定を行うことは、刑事訴訟規則11条の禁止する訴訟手続の進行に該当し違法となるか。特に、勾留の更新が同条ただし書の「急速を要する場合」に含まれるかが問題となる。
規範
裁判官に対する忌避の申立てがあった場合、原則として訴訟手続を停止しなければならない(刑訴法24条1項)。しかし、刑事訴訟規則11条ただし書によれば、「急速を要する場合」には、例外的に訴訟手続を進行させることが許容される。勾留の更新決定は、身分上の重大な不利益を避ける必要性や手続の継続性から、この例外規定に該当すると解される。
重要事実
被告人が担当裁判官に対して忌避の申立てを行った。当該裁判官は、忌避申立てに伴う訴訟手続の停止期間中であったが、被告人に対する勾留期間が満了に近づいたため、勾留の更新決定を行った。これに対し被告人側は、忌避申立てによる停止義務に違反し、憲法31条(適正手続)の趣旨に反する不法な決定であるとして特別抗告を申し立てた。
あてはめ
忌避申立てがなされた場合であっても、被告人の拘禁状態を継続する必要がある場面において、勾留期間が満了すれば被告人を釈放せざるを得なくなる。このような事態は、公判手続の円滑な進行や身体拘束の必要性という観点から、緊急の対応が求められる事態といえる。したがって、忌避の申立てを受けた裁判官が勾留更新決定を行うことは、刑訴規則11条ただし書の「急速を要する場合」に含まれ、同条の禁止する手続進行には当たらないと解される。
結論
忌避申立てによる訴訟手続停止中であっても、勾留の更新決定をすることは刑訴規則11条ただし書により適法であり、憲法31条にも反しない。
事件番号: 昭和38(し)15 / 裁判年月日: 昭和38年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の提出遅延に関し、所定の期間内に提出がなかった場合に「上申書」と題する書面を提出したとしても、それを適法な控訴趣意書とみなすことはできず、提出遅延を正当化する「やむを得ない事情」も認められない。 第1 事案の概要:控訴人が、所定の提出期間内に控訴趣意書を提出しなかった。期間徒過後に「上申…
実務上の射程
忌避制度による訴訟停止の例外(規則11条ただし書)の具体例として、勾留更新を位置づける。答案上は、弁護人の遅延目的の忌避申立てに対する対抗措置や、身体拘束の適法維持の論理として活用できる。ただし、本決定は簡潔なものにとどまるため、具体的な「急速を要する場合」の判断基準については、後の判例法理も併せて参照すべきである。
事件番号: 昭和27(し)49 / 裁判年月日: 昭和28年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】決定手続における事実の取調べは必ずしも証人尋問の方法による必要はなく、適宜の方法で参考人を審尋することも許される。また、その際に被告人や弁護人に立ち会いの機会を与えなかったとしても違法ではない。 第1 事案の概要:被告人が再審請求を行った事案において、原審は事実の取調べのためにAを尋問したが、証人…
事件番号: 昭和28(す)163 / 裁判年月日: 昭和28年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官の忌避の裁判が憲法32条、37条1項に違反するという主張は、独自の憲法解釈に基づかない限り、実質的には訴訟法違反を主張するものにすぎず、特別抗告の理由とはならない。裁判官の構成を含め、法に従った裁判所の判断は憲法上の裁判を受ける権利を保障しているものと解される。 第1 事案の概要:本件は、裁…
事件番号: 昭和27(し)30 / 裁判年月日: 昭和27年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官が合議体の構成員として判決に関与しながら、出張等の事故により記名押印できない場合、他の裁判官がその理由を付記して記名押印することは、判決の効力に影響を及ぼさない正当な手続である。 第1 事案の概要:本件判決において、合議体の構成員である裁判官小谷勝重は、判決の合議および成立に関与したが、判決…
事件番号: 昭和25(し)61 / 裁判年月日: 昭和25年12月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告の理由として憲法違反を主張していても、その実質が原決定の訴訟手続に関する単なる法令違反にすぎない場合には、刑罰訴訟法上の適法な特別抗告の理由とは認められない。 第1 事案の概要:特別抗告人が、原決定の訴訟手続に関する不服を憲法違反と主張して特別抗告を申し立てた事案。なお、具体的な事案の詳細…