判旨
控訴趣意書の提出遅延に関し、所定の期間内に提出がなかった場合に「上申書」と題する書面を提出したとしても、それを適法な控訴趣意書とみなすことはできず、提出遅延を正当化する「やむを得ない事情」も認められない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法及び同規則が定める控訴趣意書の提出期間徒過後に提出された「上申書」が適法な控訴趣意書とみなされるか、また、その遅延が刑訴規則238条にいう「やむを得ない事情」に該当するか。
規範
控訴趣意書は刑事訴訟法及び刑事訴訟規則に定める所定の提出期間内に提出されなければならず、期間徒過後の書面提出について、刑訴規則238条の「やむを得ない事情」が認められない限り、控訴棄却を免れない。
重要事実
控訴人が、所定の提出期間内に控訴趣意書を提出しなかった。期間徒過後に「上申書」と題する書面を提出したが、原審はこれを適法な控訴趣意書とは認めず、提出の遅延についても「やむを得ない事情」に当たらないと判断した。これに対し、事実誤認と法令違反を理由に特別抗告が申し立てられた。
あてはめ
本件において、控訴趣意書の提出期間内に適切な書面が提出されておらず、提出された「上申書」は形式・内容ともに適法な控訴趣意書としての要件を欠いている。また、期間内に提出できなかったことについて、客観的に正当化し得る障害等の事情(やむを得ない事情)は認められない。したがって、手続上の不備を補完することはできず、原決定の判断に過誤はない。
結論
所定の期間内に控訴趣意書が提出されなかった以上、提出された「上申書」を趣意書とみなすことはできず、遅延について「やむを得ない事情」もないため、控訴棄却は妥当である。
実務上の射程
事件番号: 昭和28(す)536 / 裁判年月日: 昭和28年11月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所がなした上告棄却の決定に対しては、抗告をすることが許されないだけでなく、これに代わる異議の申立てをすることも許されない。 第1 事案の概要:申立人は、最高裁判所がなした上告棄却の決定(刑訴法414条、386条2項)に対し、不服として異議の申立てを行った。なお、具体的な事案の内容については…
控訴審の手続遵守を厳格に求める判例である。答案上では、控訴趣意書の提出遅延が問題となる場面において、特段の事情がない限り期間制限が厳格に適用されること、及び書面の題名や後追いの主張にかかわらず形式的・実質的要件を満たさない書面は救済されないことを示す際に活用できる。
事件番号: 昭和25(し)33 / 裁判年月日: 昭和28年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官に対する忌避の申立てにより訴訟手続を停止すべき場合であっても、被告人に対する勾留の更新決定をすることは、刑事訴訟規則11条ただし書にいう「急速を要する場合」に該当し、適法である。 第1 事案の概要:被告人が担当裁判官に対して忌避の申立てを行った。当該裁判官は、忌避申立てに伴う訴訟手続の停止期…
事件番号: 昭和28(し)67 / 裁判年月日: 昭和28年9月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の最終提出日直前に別罪で逮捕勾留されたために提出が遅れた場合であっても、刑訴法386条1項1号に基づく控訴棄却決定は、被告人の弁護権行使を不当に制限するものではなく、憲法13条等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は控訴を提起したが、控訴趣意書の最終提出日の2日前に別罪により逮捕勾留…
事件番号: 昭和26(し)57 / 裁判年月日: 昭和26年10月6日 / 結論: 棄却
高等裁判所がした控訴棄却の決定に対し、自己又は代人の責に帰することができない事由により所定の期間内に異議の申立をすることができなかつた場合には、上訴権の回復の規定の準用がある。
事件番号: 昭和29(し)71 / 裁判年月日: 昭和30年2月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人および弁護人に対し控訴趣意書の提出期限が適法に通知されていた場合、弁護人の懈怠により期限内に提出されなかったとしても、控訴棄却の決定は適法である。弁護人の過失は当事者側の責任に帰せられるべきであり、裁判所の決定を違法とする理由にはならない。 第1 事案の概要:被告人(申立人)およびその弁護人…