高等裁判所がした控訴棄却の決定に対し、自己又は代人の責に帰することができない事由により所定の期間内に異議の申立をすることができなかつた場合には、上訴権の回復の規定の準用がある。
高等裁判所のした控訴棄却の決定に対する異議申立期間と上訴権回復の規定の準用
刑訴法362条,刑訴法363条,刑訴法386条1項,刑訴法386条2項,刑訴法385条,刑訴法428条2項
判旨
控訴棄却決定に対する異議申立てにおいて、送達の効力を争うことで法定の申立期間を経過した場合には、上訴権回復の申立てを同時に行わなければ、その異議申立ては不適法となる。
問題の所在(論点)
控訴棄却決定に対する異議申立期間を経過した後に、送達の無効を理由として異議を申し立てる場合、上訴権回復の手続き(刑訴法362条)を経る必要があるか。
規範
控訴棄却決定に対する異議申立て(刑訴法386条2項)は、決定の送達があった日から3日以内に行わなければならない(同法422条参照)。この期間経過後に送達の適否を争って異議を申し立てる場合には、同法362条以下の規定に従い、所定の期間内に上訴権回復の申立てと同時に異議の申立てをすることを要し、これを欠く申立ては不適法である。
重要事実
被告人Aに対し、控訴趣意書の最終提出日の通知および控訴を棄却する決定が、保釈制限住居に宛てて送達された。被告人は、当該送達は無効であると主張して異議を申し立てたが、その申立ては控訴棄却決定の送達から約2か月が経過した後であった。なお、被告人は異議申立てに際して上訴権回復の申立てを行っていなかった。
事件番号: 昭和26(し)56 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告の申立てが法定の申立期間経過後にされた場合には、裁判所は刑事訴訟法434条、426条に基づき、当該申立てを棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人および弁護人が、原決定の謄本の送達を受けた日は昭和26年6月9日であった。しかし、被告人側が本件抗告の申立てを行ったのは、同年7月4日であっ…
あてはめ
本件における控訴棄却決定の送達は昭和26年1月12日になされており、これに対する異議申立期間は、刑訴法386条、385条、428条、422条の規定により送達から3日間である。被告人が異議を申し立てたのは同年3月8日であり、一応の送達がなされたときから法定の申立期間を著しく経過している。送達の適否を争うことにより期間徒過の正当性を主張するとしても、刑訴法362条以下の規定に基づく上訴権回復の申立てが同時になされていない以上、本件異議申立ては期間経過後の不適法なものと評価せざるを得ない。
結論
被告人による異議申立ては法定期間経過後になされた不適法なものであるため、これを棄却した原審の判断は正当であり、本件特別抗告は棄却される。
実務上の射程
送達の瑕疵を理由に不服申立てを行う場合であっても、外形上送達が完了し期間が進行している以上、救済手続としての上訴権回復(362条)を併用すべきという実務上の峻厳な手続観念を示している。答案上は、期間徒過後の救済手段の具備を検討する際の根拠となる。
事件番号: 昭和25(し)64 / 裁判年月日: 昭和26年4月13日 / 結論: その他
一 そして最高裁判所が正義を維持するため発動する職権破棄権は本件のような場合には当然にこれを保有するものというべきであるから本件特別抗告については刑訴法第四一一条の準用があるものと解するのが正当である。 二 被告人(控訴申立人)に対し、保釈決定原本に記載された制限住居とまつたく異つた制限住居を記載した謄本が送達せられ、…
事件番号: 昭和26(し)37 / 裁判年月日: 昭和26年7月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴棄却決定に対する異議申立は、法定の申立期間(3日)を経過した後になされた場合には不適法であり、当該期間の経過によって決定は確定する。そのため、確定した決定の前提となる手続の違憲性を争うことは、特別抗告の適法な理由とはなり得ない。 第1 事案の概要:東京高裁は、被告人Aに対し控訴趣意書の最終提出…
事件番号: 昭和28(す)536 / 裁判年月日: 昭和28年11月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所がなした上告棄却の決定に対しては、抗告をすることが許されないだけでなく、これに代わる異議の申立てをすることも許されない。 第1 事案の概要:申立人は、最高裁判所がなした上告棄却の決定(刑訴法414条、386条2項)に対し、不服として異議の申立てを行った。なお、具体的な事案の内容については…
事件番号: 昭和27(し)28 / 裁判年月日: 昭和27年8月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上訴権回復の要件である「自己又は代理人が責任を負うことのできない事由」とは、不注意等の過失がないことを指し、弁護人の不注意により控訴期間を徒過した場合はこれに当たらない。 第1 事案の概要:被告人Aに対する窃盗被告事件の第一審判決に対し、被告人本人またはその弁護人は、法定の控訴期間内に控訴の申し立…