判旨
上訴権回復の要件である「自己又は代理人が責任を負うことのできない事由」とは、不注意等の過失がないことを指し、弁護人の不注意により控訴期間を徒過した場合はこれに当たらない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法362条の上訴権回復の要件において、弁護人の不注意によって控訴期間を徒過した場合が「自己又は代理人が責任を負うことのできない事由」に該当するか。
規範
刑事訴訟法362条にいう「自己又は代理人が責任を負うことのできない事由」とは、上訴申立人が善良な管理者の注意を尽くしても、なお上訴期間内に上訴を申し立てることができなかった客観的な事情を指す。したがって、申立人本人またはその代理人(弁護人等)の不注意に起因する期間徒過は、同条の救済対象には含まれない。
重要事実
被告人Aに対する窃盗被告事件の第一審判決に対し、被告人本人またはその弁護人は、法定の控訴期間内に控訴の申し立てを行わなかった。その後、上訴権回復の請求がなされたが、原審(控訴審)は、期間内に申し立てなかったことは被告人または弁護人の責めに帰すべき不注意によるものであると認定し、請求を棄却した。これに対し、憲法違反および刑訴法362条違反を理由として特別抗告がなされた。
あてはめ
本件において、第一審判決に対する控訴が法定期間内になされなかった原因は、被告人またはその弁護人の不注意にあると認定される。弁護人は、上訴申立人の代理人としての地位にあり、その過失は「代理人が責任を負うことのできない事由」には当たらない。したがって、期間徒過について本人らに帰責事由がないとはいえず、刑訴法362条の救済要件を充足しないと判断される。
結論
被告人または弁護人の不注意による期間徒過は「自己又は代理人が責任を負うことのできない事由」に当たらないため、上訴権回復の請求は認められない。
事件番号: 昭和27(し)50 / 裁判年月日: 昭和27年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法362条の「自己の責に帰することができない事由」の存否について、裁判所が期待可能性の有無に言及せずとも、法定期間内に控訴しなかったことが本人の責任によると認定していれば、判例違反には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、有価証券偽造行使、詐欺、同未遂の各被告事件について第一審判決を受…
実務上の射程
上訴権回復の判断において、弁護人の過失は本人(被告人)の過失と同視される。実務上、弁護人が期間を勘違いした場合などは、特段の事情がない限り救済されないため、期間管理の重要性を示す判例である。
事件番号: 昭和28(し)20 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】上訴権回復の請求が認められるためには、被告人が自ら上訴手続をとり得ない程度の病状等にあることを要し、単なる病状の存在のみでは足りない。 第1 事案の概要:被告人は、上告提起期間内に上告手続をとらなかった。その後、当時の病状により手続が不可能であったとして上訴権回復の請求を申し立てた。原審は、被告人…
事件番号: 昭和29(し)28 / 裁判年月日: 昭和29年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上訴権回復請求を棄却した決定は、刑事訴訟法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には該当せず、特別抗告の対象とはならない。 第1 事案の概要:抗告人は、名古屋高等裁判所が昭和29年5月21日に行った上訴権回復請求を棄却する決定に対し、最高裁判所に特別抗告を申し立てた…
事件番号: 昭和27(し)2 / 裁判年月日: 昭和27年10月31日 / 結論: 棄却
控訴審の弁護人として選任された弁護士は控訴申立に関しては刑訴三六二条にいわゆる被告人の代人と解すべきものである。
事件番号: 昭和27(し)36 / 裁判年月日: 昭和27年7月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴申立期間の経過後に控訴の提起があった場合において、申立人に手落ちがなかったと認められない限り、控訴棄却の決定は正当である。刑事訴訟法に基づく救済措置を求めるには、不備が生じたことについて当事者の責めに帰すべき事由がないことを要する。 第1 事案の概要:申立人は、控訴申立期間を徒過して控訴を提起…