判旨
被告人および弁護人に対し控訴趣意書の提出期限が適法に通知されていた場合、弁護人の懈怠により期限内に提出されなかったとしても、控訴棄却の決定は適法である。弁護人の過失は当事者側の責任に帰せられるべきであり、裁判所の決定を違法とする理由にはならない。
問題の所在(論点)
弁護人の懈怠によって控訴趣意書が期限内に提出されなかった場合に、控訴棄却の決定を下すことは、被告人の守られるべき憲法上の権利や刑事訴訟法の規定に照らして適法か。
規範
控訴趣意書の提出期限に関する通知が、被告人及び弁護人の双方に対して適法に行われている場合、提出期限の遵守は当事者側の責任に属する。弁護人の懈怠による不提出という事由があっても、手続上の違法は認められず、裁判所は刑訴法等の規定に従い控訴棄却の決定をすることができる。
重要事実
被告人(申立人)およびその弁護人に対し、控訴趣意書の提出最終日の通知が適法になされていた。しかし、弁護人の懈怠により、定められた期限までに控訴趣意書が提出されなかった。これを受け、裁判所は控訴棄却の決定を下した。申立人は、弁護人の過失による不提出を理由に控訴棄却は違憲・違法であるとして特別抗告を行った。
あてはめ
本件では、被告人および弁護人の双方に対し、提出期限が適法に通知されていたという事実が認められる。期限の通知という適法な手続が履行されている以上、その後の提出の可否は弁護人の職責に委ねられている。弁護人が提出を怠ったことは、弁護人自身の責任であり、裁判所の手続に瑕疵を生じさせるものではない。したがって、期限後の不提出を理由とする控訴棄却は正当な手続的帰結であるといえる。
結論
弁護人の懈怠により期限内に控訴趣意書が提出されなかった場合であっても、通知が適法であれば、控訴棄却の決定に違法はない。
事件番号: 昭和30(し)18 / 裁判年月日: 昭和30年6月3日 / 結論: 棄却
強制弁護の事件について、控訴裁判所が被告人に対し控訴趣意書の最終差出日を通知するにあたり、まだ弁護人の選任届が提出されていない場合でも、先ず弁護人を選任したうえでなければ右通知をすることができないものではない。
実務上の射程
控訴趣意書の提出遅延が弁護人の責めに帰すべき事由による場合でも、裁判所が救済する義務を負わないことを示した。答案上は、弁護人の過失を被告人側の不利益として扱うことの合憲性・妥当性を論じる際や、期限遵守の厳格性を説明する際の根拠として活用できる。ただし、実務上は上訴権回復等の救済措置が検討される余地はあるが、判決文からは本件における具体的な救済の可否は不明である。
事件番号: 昭和30(し)49 / 裁判年月日: 昭和30年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の差出期間内に弁護人が選任されず趣意書が提出されなかった場合であっても、それが被告人の責に帰すべき事由によるものであり、裁判所が弁護人選任権を妨げた事情がない限り、控訴棄却の決定は憲法に反しない。 第1 事案の概要:詐欺被告事件の控訴審において、裁判所は控訴趣意書の差出最終日を2月10日…
事件番号: 平成5(し)170 / 裁判年月日: 平成6年1月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が選任した弁護人に十分な時間がありながら控訴趣意書を提出せず、期限当日に辞任した場合には、控訴棄却決定は有効であり、弁護権の侵害や手続の不備には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が自ら選任した私選弁護人が存在していた事案である。当該弁護人は、控訴趣意書の提出期限までに提出準備のための十分…
事件番号: 昭和38(し)15 / 裁判年月日: 昭和38年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の提出遅延に関し、所定の期間内に提出がなかった場合に「上申書」と題する書面を提出したとしても、それを適法な控訴趣意書とみなすことはできず、提出遅延を正当化する「やむを得ない事情」も認められない。 第1 事案の概要:控訴人が、所定の提出期間内に控訴趣意書を提出しなかった。期間徒過後に「上申…
事件番号: 昭和31(し)38 / 裁判年月日: 昭和31年9月19日 / 結論: 棄却
所論は違憲(三二条の違反)をいうけれども、その本旨は、弁護人の事務員の過失により弁護人が裁判所から控訴趣意書提出最終日の指定通知のあつたことを知らず、控訴趣意書を提出しないで右の提出期限を徒過したため、控訴裁判所が控訴棄却の決定をしたことについて、原決定がこれを相当と認めて右控訴棄却の決定を維持したことが、不当違法であ…