所論は違憲(三二条の違反)をいうけれども、その本旨は、弁護人の事務員の過失により弁護人が裁判所から控訴趣意書提出最終日の指定通知のあつたことを知らず、控訴趣意書を提出しないで右の提出期限を徒過したため、控訴裁判所が控訴棄却の決定をしたことについて、原決定がこれを相当と認めて右控訴棄却の決定を維持したことが、不当違法であるという趣旨に帰し、単なる控訴法違反の主張を出ないものと認められる。従つて所論は適法な特別抗告の理由に当らない。
弁護人の事務員の過失のため控訴趣意書提出期間徒過による控訴棄却と違憲(三二条違反)の主張
刑訴法386条1項1号,憲法32条
判旨
弁護人の事務員の過失により控訴趣意書の提出期限を徒過した場合、控訴棄却の決定を維持することは適法であり、憲法違反には当たらない。
問題の所在(論点)
弁護人の事務員の過失により控訴趣意書の提出期限を徒過した場合に、控訴を棄却することが憲法違反や訴訟法違反に当たるか(刑事訴訟法386条1項1号の適用範囲)。
規範
弁護人の事務員の過失によって裁判所からの通知を弁護人が認識できず、結果として控訴趣意書の提出期限を徒過した場合、その不利益は原則として被告人側が負うべきであり、控訴棄却決定を維持することは刑事訴訟法上適法である。
重要事実
弁護人の事務員が過失により、裁判所から指定された控訴趣意書の提出最終日の通知があったことを失念または見落とした。そのため、弁護人は期限を知らぬまま提出期限を徒過した。これを受け、控訴裁判所は控訴棄却の決定を行い、原審もこれを相当として維持した。
事件番号: 昭和27(し)36 / 裁判年月日: 昭和27年7月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴申立期間の経過後に控訴の提起があった場合において、申立人に手落ちがなかったと認められない限り、控訴棄却の決定は正当である。刑事訴訟法に基づく救済措置を求めるには、不備が生じたことについて当事者の責めに帰すべき事由がないことを要する。 第1 事案の概要:申立人は、控訴申立期間を徒過して控訴を提起…
あてはめ
本件では、通知自体は適法に弁護人事務所に到達しており、期限徒過の原因は弁護人側の管理体制(事務員の過失)にある。弁護人の補助者たる事務員のミスは弁護人自身の責任に帰すべきものであり、裁判所の訴訟手続に瑕疵はない。したがって、期限後の提出を認めず控訴を棄却した決定を維持した判断に、不当違法な点はないといえる。
結論
弁護人側の過失による提出期限の徒過を理由とする控訴棄却は適法であり、特別抗告を棄却する。
実務上の射程
弁護人の帰責事由による期限徒過において、救済措置が認められない厳格な運用を示す。訴訟遅延防止の観点から、弁護人の事務管理責任を重く見る実務上の指針となる。
事件番号: 昭和29(し)71 / 裁判年月日: 昭和30年2月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人および弁護人に対し控訴趣意書の提出期限が適法に通知されていた場合、弁護人の懈怠により期限内に提出されなかったとしても、控訴棄却の決定は適法である。弁護人の過失は当事者側の責任に帰せられるべきであり、裁判所の決定を違法とする理由にはならない。 第1 事案の概要:被告人(申立人)およびその弁護人…
事件番号: 昭和28(し)67 / 裁判年月日: 昭和28年9月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の最終提出日直前に別罪で逮捕勾留されたために提出が遅れた場合であっても、刑訴法386条1項1号に基づく控訴棄却決定は、被告人の弁護権行使を不当に制限するものではなく、憲法13条等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は控訴を提起したが、控訴趣意書の最終提出日の2日前に別罪により逮捕勾留…
事件番号: 昭和28(し)21 / 裁判年月日: 昭和28年7月16日 / 結論: 棄却
原審の判示するところは、単に、被告人から控訴した事件において、一審の弁護人であつた梅山実明、同伊藤静男から控訴趣意書と題する書面が提出されたけれども、右弁護人等の原審における選任届は控訴趣意書提出最終日を経過した後に提出されたため、右控訴趣意書は結局無権限のものによつて提出された無効のものであり且つ後に提出された弁護人…
事件番号: 昭和30(し)49 / 裁判年月日: 昭和30年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の差出期間内に弁護人が選任されず趣意書が提出されなかった場合であっても、それが被告人の責に帰すべき事由によるものであり、裁判所が弁護人選任権を妨げた事情がない限り、控訴棄却の決定は憲法に反しない。 第1 事案の概要:詐欺被告事件の控訴審において、裁判所は控訴趣意書の差出最終日を2月10日…